風になって

本日のLHRは 『体育祭について』らしい。
黒板にでかでかと書いてある。
小学生じゃあるまいし 『ついて』なんてねぇ。
いくつかの競技が書き出され その中から出たい競技を選ぶらしい。

定番の……って言うか、ゲーム上であった 二人三脚と借り物競争とパン食い競争の他に １００メートル走やリレーなんてのもある。
まぁ ぶっちゃけどれも面倒そうだ。幸運なのは 強制じゃないとこ。のんびり見学させてもらおう。当日 面倒だったら休めばいいし。
そんな事を考えながら リレー選手を決めているみんなを見物。

「やっぱりアンカーは佐伯くんよね〜？」

「いや。僕より陸上部の人達の方がいいんじゃないかな？」

「でも〜 佐伯くん早いでしょ〜？」

「そんなことないと思うよ？」

そんな三文芝居が繰り広げられている。
この嘘臭い笑顔にどうしてみんな騙されるんだろう？私も１５の時は そうだったんだろうか……
仕事柄 ナルな奴は多かった気がするけど こんなタイプは居なかったよな〜？学校の連中は普通の子だったし。それ以前に王子キャラなんているわけないよねぇ？

……王子キャラ。キャラって……ウケる！

自分で考えた事に 心の中で大爆笑。一人だったら笑い転げてるに違いない。
キャラって アイドルじゃあるまいし―― ってアイドルか。この扱いって。女の子の声がどう考えても黄色い。
毎日会う身近な異性をアイドルに出来る この子達はスゴイ。どんなに繕って見せても 必ず本質は見えるはずなのに 見ようとしないんだもの。

あれだよね？ ―――恋は盲目。
これが恋なのかは知らないけど。

そんな事をぼんやりと考えていると、委員長の締めの言葉が聞こえてくる。どうやらメンバーが決まったらしい。
リレーのメンバーに佐伯の名前が入ってるところを見ると 王子スマイルでは逃げ切れなかったようだ。
まぁ あの隙だらけの中途半端な対応じゃ無理もない。押し切られたら断れないだろうな。そこが１５歳らしいし、佐伯の本質なんだろうけど。
他の種目に出る名前を見てると １００メートルにあかりちゃんの名前を発見。

へー 足速いんだ。私はいつも二人三脚しか使わなかったから知らなかったよ。一番簡単なんだよね。二人三脚って。面倒でいつも１年目しか出なかったけど。