09 学生って大変よね

左手がなんとなく沈む感じ。
あぁ。ベットに腰かけたんだね。
んー? こめかみの辺りに柔らかい感触。

―――指?

あぁ。髪が邪魔だった?
今すごく眠くて……

ギシリとスプリングが音を立て、近づいてくる気配。

「………鈴香?………」

ごめん。ホントに今日は眠いんだ。

―――だからこれで勘弁して。

彼の首に左腕を回し引き寄せる。
最初は触れるだけの軽いキス。
何度か啄むように唇を味わう。

―――あぁ。この唇好き。

離れそうになる身体をもう一度引き寄せ 少し開いた隙間から舌を入れた。
上顎を刺激するとピクリと舌が動く。
すかさず搦めとり 裏側を撫で上げる。

―――違和感のない味。
たまにダメだって思う時もあるけど、この味好きだな。

開いている右腕も彼に巻き付ける。
柔らかな髪が気持ちいい。

私の舌先を使って彼の根元をくすぐったり、吸い上げてみたり。
逃げる彼を楽しんでから、優しく絡める。
されるがままだった舌が おずおずと私に合わせて動き出した。

「―――んっ――――」

少し苦しいのか 彼が溜め息ともつかない声を出す。
それでも なんだかぎこちないその動きは止まらなくて。

ぎこちない………

そう ぎこちないのよ………

こんな ぎこちないキスする人なんて……

――――誰だ――――

上顎を撫で上げながら舌を抜く。
最後に軽く口づけた頃 ようやく頭が覚醒し、目を開けた。

至近距離にいたのは―――

屈折王子、佐伯 瑛。

しばらく黙って見つめ合う。
私が引き寄せたせいで 上半身だけは馬乗りになっていた。

「ごめん。 間違えた」

腕を回したまま 正直に謝る。
特定の誰かと間違えたってわけじゃないけど、こっちに来た事忘れてたよ。
私の一言に ようやく我に返ったのか、腕を振りほどいて飛びのく。

「―――な な な!!」

そこまで逃げる事ないでしょうに。
起き上がり 髪を掻き上げる。
身体を起こした事で、頭も回転を始める。
まだ 口をパクパクさせている彼にとりあえず もう一度謝る。

「だから ごめんって。まさか人が来るなんて思わなくて……」

「――いっ 今の!!」

「あー えっと…… ま。事故チューって事で」

「なんで!!」

なんでって……そんなのこっちが聞きたいよ。
鍵 かかってたよね? たしか。

prev 9/25 next
しおりを挟む/しおり一覧

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -