04 学生って大変よね

待っている間のなんとなく手持ちぶたさな時間、辺りをくるりと見渡してみる。
アンティーク調の小物が出窓に飾られてたり 花もガラスの器でアレンジメント風になってたり。
ちょっとたっぷりめのカーテンとか使っちゃいたくなるけど それすらもないのは……

ふぅん。ここから見るのが一番だからか。

窓際だとそう感じないだろうけど ここからだと一枚の絵画や写真のようだ。窓枠が上手くフレームの役割をしてる。その証拠に 壁にはなんの飾りもない。
分からない人には殺風景に感じるんだろうけど……こういう遊び心のある人好きだな。

「気に入って頂けました?」

振り返ると悪戯っぽく笑うマスター。

「えぇ。とても」

やっぱり大人だ。間がいい。
それに静かに流れるジャズのリズムといい、漂うコーヒーの香りといい、かなり心地いい。
にっこりと笑みを返し、また窓に目を向け店全体の空気を楽しんでいると、ドタバタとぶち壊す足音。

「お待たせ!!」

誰も待ってないから!すっかり忘れてたから!ホンットに空気読めないんだな!
今までのいい雰囲気をぶち壊されたのに腹がたって睨みつける。

「……なに?その恰好」

「店の制服!俺 店手伝ってるから」

……こいつ やっぱりバカ?自分でばらしてるんだけど。いや。私も聞いたけどさ。

「お待たせいたしました。珊瑚礁ブレンドになります」

なんだか嬉しそうな笑顔でコトリとカップを置く。

「もしかして これがやりたかった……とか言うわけじゃない……よね?」

恐る恐る聞いてみると また左手を頭の後ろに置き 頬を染めている。

……いったいコイツは誰なの!佐伯 瑛という名の屈折王子は何処へ行ったのよ!

「瑛はお嬢さんの事が よほど気に入ったようですね。これからもよろしくお願いしますね?」

店の店主から祖父の顔になったマスターがにこやかに頭を下げる。

……いやだ。お願いされたくない!
こんなめんどくさそうなガキンチョのお守りはしたくない。
さすがにそこまでは言えず、黙ってカップに口をつける。
あ。美味しい。かなり。

でも もう二度と来ない。
店の雰囲気もコーヒーの味もかなり気に入ったけど、こいつ居るからイヤ。
自分の秘密を自分でばらす おバカさんに付き合いたくない。

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