16 はばたき市散策

パラパラと席を立つ人達が出始める。
書いた人から帰っていいんだろうか……
いつの間にか先生いないし。

この学校ってアバウトすぎ。

「出来たっ!」

「えっ?」

隣を見ると、あかりちゃんがプリントを前に渡していた。

「もしかして 今まで書いてた?」

「うん。なんか悩んじゃって。
鈴香ちゃんは早いんだね」

「結構 即決だから。あかりちゃんはもしかしなくても なかなか決まらないタイプ?」

「そうなの。目移りしちゃうって言うか……優柔不断なの」

えへへと頭を掻いて笑う。
女の私から見てもこれは可愛い。
襲いたくなる奴らの気持ちが分かる気がする。
この えへへを私がやったら気持ち悪いな。きっと。

「あかりちゃん。もう帰るんなら途中まで一緒に帰らない?」

「いいの? 嬉しい! 私もそう言おうと思ってたの!」

うっ。キラキラ笑顔だ。これじゃ 男が誤解して当然だよ。
これから 彼女に骨抜きにされるのが見られるんだ……

「……おもしろいかも」

「何か言った? 鈴香ちゃん」

「ううん。なんでもないよ?
じゃっ 帰ろっか!」

鞄を掴んで振り返ると、目を見開いた白髪頭……もとい。色素の薄い髪をした男の子が見つめていた。

……クラス一緒だったんだ……
静かだから気がつかなかった……
気付いてるよね?この表情じゃ。

にこやかに席を立ちこっちに向かってくる。
隣を見れば怯んで動けないあかりちゃん。
どうしたものか……

「さっ!帰るよ!あかりちゃん!」

有無を言わさず手を引いて 彼を避けて教室を出る。
さすがに学校じゃ追いかけて来ないだろう。
ほとんど走りながら廊下を降りる。
玄関まで来てから振り返ると追っては来てないみたいだった。

「あの 鈴香ちゃん。ありがとう」

「え? なに?」

「私が 佐伯くん苦手なの分かって連れ出してくれたんでしょう?」

「へ?」

「今日 ちょっといろいろあって、佐伯くんに怒られたから……」

………今朝のイベントか。
その前に出会いイベントもあったっけ。

「……佐伯くんが分からないんだけど。
早く出たら お茶くらい行けるかな?って思っただけだよ」

「……鈴香ちゃんは優しいんだね」

ふわりと微笑まれる。
……可愛すぎる。って言うか 何かのフラグが立ったかもしれない。

その後 つい口から出まかせを言ったため 喫茶店でお茶。
あらためて 主人公は女の子らしいと再確認したのだった。

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