10 はばたき市散策

「どっ……どうして逃げるんだよっ!!」

力尽き立ち止まった私に 肩で息をする彼が追い付く。

15歳の成長期と言えど やはり砂浜を全力疾走はキツイらしい。

彼でさえそうなんだから、私なんてよくやった方だと思う。
何をよくやったのかは分からないけど。

「しっ 知らない人に追い掛けられたら 逃げるのは当たり前っだと思いっますけどっ」

ここは 無難な解答。
私が元々知ってたなんてばれたら ややこしそうだ。
面倒な事になるのは勘弁してほしい。

「さっき会っただろ?商店街で!!」

ちょっと。なんで猫かぶりモードじゃないのよ。
さっきとは違うじゃない。
どうしていきなり 本性見せてるのよ。

そう突っ込みたいけど、疲れたから早く帰りたい。
適当に話しを切り上げよう。

「……そうでしたっけ?」

「えっ? ほら あの メガネ屋に連れてってくれただろ?」

「……あぁ!コンタクトの人ですか。……それで……なにか?」

パチンと手を叩き、今気付いたフリ。
早々と話しを切り上げる事も忘れない。

私の淡泊なリアクションにかなりガッカリとした顔をしたけど、めげずに話しを続ける。

「今度会えたら お礼をしなきゃと思って!うち そこの喫茶店なんだけど、コーヒー飲まないか?」

………安い礼だ………

じゃなくて! なんかこいつキャラ違う!
ツンデレで捻くれてる屈折王子なんじゃないの?
人懐っこいただの15歳の少年じゃない!

かなり面倒な予感がする。

私の直感は当たる。
こいつ 私の外見で誤解してる!

「いえっ! 当然の事しただけですしっ!
もう 帰らないと家族が心配しますからっ!
それじゃ さよならっ!」

じりじりと後ずさりして踵を返す。

「いつでも待ってるから!絶対来いよ!」

後ろから聞こえてくる叫びに知らんぷり。

聞こえない! 聞こえない!!
私は今 なーんにも聞こえてない!!

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