風になって

ショッピングモールを出て そのまま海沿いを歩く。

たしかに 綺麗なんだよね、海。
青いよね。うん。
道路沿いで こんなに堤防が低くて、台風の時大丈夫かと思うけど……

……きっと あまり突っ込んじゃダメなんだよね。

砂浜がず〜っと続いてる。真っ白な砂。
その先はY字路になってて、一本はだらだら続きそうな坂道。
もう一本は そのまま海沿いの道らしい。

どっちでもいいんだけど まぁ海沿いが妥当かな？
正直、坂道を上がるのが面倒だと思ってるだけなんだけどね。

せっかくだからと 砂浜に下りてみる。
サンダルだと歩きにくいから素足になる。
アンクルストラップ付きでよかった。
片方ずつ持って ブラブラと振りながら歩く。

砂が細かくて気持ちがいいな。
こんな場所なら 気分よく撮影出来るのに。
まぁ アクティブイメージないから、そんなオファーは来ないんだろうけどさ。

しっかし 長い砂浜だなぁー

砂浜と海から視線を外して陸に目を向ければ、小さな灯台が見えた。

あ。灯台だ。
きっと あれなんだよね。
伝説とやらの灯台。
そして 隣に建物。

……うん。わかった！よーくわかった！
今日はこのまま帰ろう！！

くるりと踵を返し歩き出す。

さっさとこの場から去らないと！！

来る！！多分あっちから全力で走ってくるのは彼だ！！だって、頭が白い！

……もとい！色素が薄い！！

「ちょっ ちょっと待って！！」

だから 冗談じゃないって！

どうして 一日に二回も会わなきゃならないのよ！
それにどうして 正統派王子じゃなくて、エセ王子なの！！

「だから 待ってって！！」

まったく聞こえないフリで全力で走る。
足は遅くないとは思うけど、砂浜と運動不足なせいで あっという間に追い付かれる。
さすが１５歳。そして私は１５と言えど 実際は２３で運動もしない夜型人間。
体力が続くはずがない。

こんなところで 悔やむ事になるなんて思わなかった。
ジムくらいは真面目に行っておけばよかったよ。
せっかく 年会費払ってるのにさ。