08 はばたき市散策

「とりあえず 当面は着回し出来る枚数ですからね もう買ったら駄目ですよ?」

「……あんた すごいのね。
まさか こんな才能があるとは思わなかったわ」

三階のカフェでコーヒーを飲みながら 少し休憩。
紙袋を覗きながら 素直な感想を口にする。

「貴女が アバウトすぎるんです。
店ごと買い取る気ですか?」

「いや。いくらなんでも それはないから」

「それじゃあ 私は荷物を自宅まで運んでおきますけど、貴女はどうします?」

「あ〜。もうちょっとブラブラしてみる。
そうだ!鍵かして?」

鍵を受け取ると、スペアキーを外し彼に手渡した。

「これ スペアね? 次に会った時返してくれればいいから」

「分かりました。でもいいんですか?
私 男なんですけど」

なんだって?……誰が男だって?
確かに 女ではないが……
あれかしら 異性と言いたいの…か……?

「……すみません。何でもないです。
じゃあ 私は帰ります」

「あ。うん、よろしくね?」

では これでと頭を下げると肩を落として遠ざかる。

意識してあげた方がよかったんだろうか?
………ちょっと無理だけど。

ま、いいか。
どうせ ここだけの付き合いだし。

鞄から 地図を取り出し次の行き先を吟味。

行きたい場所はあるけど 今更引き返すのも面倒だし……
この辺りで気になる場所かー。

……学校……なんて当日同じ制服着た人の後つければいいし。

……臨海公園……なんてデートスポットって言うくらいなんだから 浮くよね?

……空中庭園……も同じか。

何これ! デートスポットばっかりじゃん!

そこで ハタと気付く。

全部デートで行く場所だった……

仕方ない。海でも行こう。
ゲーム上では 綺麗らしいし。

伝票は……ないや。奢ってくれたんだ。
まぁ 仕事の一環なら経費で落ちるんだろうな。

なんとなく がっかりで足が重い。
だって 一人じゃ行く場所ないんだもん。

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