06 はばたき市散策

「いらっしやいませ。何をお探しですか?」

「いや 別になにも?」

「お客様でしたら、こちらのキャミソールと、シフォンのスカートなんかお似合いですよ?」

なんか乗り気なんですが。山ほど持ってきてるのですが。
それにしても、どうしてピンクとかオレンジとか暖色系ばかりなんですか。

あれだこれだと、試着させられる。

私は、着せ替え人形ですか。

そう思うのに、あまりのハイテンションぶりにつっこめない。
結局山ほど買わされた。
私、買い物に向いてないかも。

………だめだ。あいつ呼ぼう。

よろよろと森林公園のベンチまでたどり着き携帯を取り出す。
数回のコールの後、慌てたような声が聞こえた。

『もう何かあったんですか?』

「もうって何よ? 荷物がいっぱいなの。
今森林公園にいるんだけど、荷物持ちになってよ。あー 喉渇いたから 何か買ってきて?じゃあね」

『あ!ちょっ……』

返事を待たずに携帯を閉じる。

あ……桜咲いてて綺麗。
近くまで行きたいけど、この荷物じゃちょっと歩けない。残念。

ベンチに座って遠くの桜を眺める。
こんなにのんびりしたのは久しぶりかも。
外に出ても車の中とか夜ばっかりだし……
たまのオフだと 寝てばっかだったしね。
3年間こういう生活したら、健康的になりそう。身体は若くなってるんだから健康なんだろうけど。

「おっ お待たせしました!探しましたよ」

後ろから声がして 振り返ると肩で息をする光輝がいた。

「早かったのね。……にしても、またスーツなの?」

「一応 制服ですから。あ!これ飲んでください」

手渡されたのはよく冷えたミネラルウォーター。
お礼を言ってキャップを開ける。
冷たい水で喉を潤すと、目を丸くしている彼と目が合った。

「なに?」

「……これ 全部買ったんですか?」

「そうだけど?」

「……いくらだったんですか?」

「カード使ったから知らない。これさ、私のマンションまで運んで欲しいのよ。
このままだと次に行けなくって」

「!!! まだ買うんですか!」

「そりゃそうでしょ。まだ一軒しか行ってないし。あ!次の店の分もお願いね?」

「………私も一緒に行きます」

冗談じゃない!! なんでこいつと歩かなきゃならないの!
荷物取りに来てくれるだけでいいのよ!
かなり 酷いこと考えてるけどさ!

慌てて立ち上がると荷物を押し付ける。

「散策したいから一人で結構!これお願いね?また後で 電話するから!
それと、これ私の部屋の鍵!後で返してくれたらいいから!じゃっ!!」

ポケットから出した鍵を彼のポケットに突っ込みながら、一気にまくし立てる。
オロオロと荷物を抱え込む彼を残し走り出す。

とりあえず逃げないと!

人の波を掻き分け 桜並木を小走り。
木を隠すなら森だからね。
並木道の終わりが見えて振り返る。
あいつは……振り切ったみたい。

頭上の桜の花びらがハラハラと舞い散る。
ホント 綺麗。入学式でも綺麗に咲いてるんだろうな。ちょっと楽しみ。

よし!次は……ショッピングモール!

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