04.おとなしく寝ていなさい

「本当に下がってる?顔……やっぱり赤いよ?」

当てていたおでこを離し瑛くんを見下ろすと、見開いていた瞳が瞬きし、両腕を掴まれて身体を起こされた。

「だっ…大丈夫だって。それより、店の準備しないと。熱くらいで寝込んでる暇なんてないし。」

そのまま瑛くんも身体を起こしてベットから降りようとするけれど、よろりと身体を揺らした。

「まだ起きるのは無理だよ。ちゃんと治さないと。」
「無理じゃない。それに、そんな甘えた事…。」
「甘えじゃないよ。今日はお店はお休みで、瑛くんはおとなしく寝てる日なんだって。」
「は?休みって?」

倒れないように慌てて身体を支え、少し強めに瑛くんに伝えるとぴたりと動きが止まる。
戸惑ったような顔の瑛くんの身体をぐいと押し返し、ベットに寝かせた。

「なあ。どういう事だよ?」
「お店のキッチン借りる時にマスターに電話したの。そしたら土鍋の場所教えてくれて――。」
「そうじゃなくて。」
「でね?今日は瑛くんのお誕生日でしょう?マスターから一日お休みのプレゼント、だって。」
「……じいちゃん…。」
「だ・か・ら。おとなしく寝て下さい。」

おとなしくなった瑛くんに掛け布団をばさりと掛ける。
マスターの名前を出したからか、今日はお店を開けないからか、さっきまでの勢いはなく、少し落ち込んだような表情になった。

「ごめんなさい。でも…あんな瑛くんを見たら、今日はお店に出てほしくなくて…。」

マスターとお店が大好きで、いつも頑張ってる瑛くんが落ち込む姿を見るのは、心が痛む。
出来る限り応援したいし、出来る事はなんでもしたいけれど、やっぱり休養も大切で、無理ばかりをしてほしくはなかった。

「……いや。おまえやマスターが俺を心配してくれてるのは分かってるから…プレゼント、ちゃんともらうよ。」
「瑛くん…。」
「サンキュウな?今日は来てくれて。」


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