01.煌めく世界ときみ

大学生活も三年目。
最近のデートと言えば学校帰りのお茶かお互いの家でのんびり過ごすか。
二人で出歩く事が珍しくなっていて、こうして駅で待ち合わせなんて事がやけに新鮮な気分。
日差しも柔らかくなった夕暮れ時、駅前には会社帰りのスーツ姿のサラリーマンやOL達が行き交う。
その中に一風場違いな浴衣姿であかりが来るのを待っていた。

「ごめーん。待った?」

「ま・っ・て・な・い。」

「いたっ!待ってないならチョップしないでよ!」

「ウルサイ。ほら、行くぞ。」

カタカタと下駄の音を響かせたあかりが俺を見つけて駆け寄ってきたのは待ち合わせのちょうど5分前。
目の前にいるあかりは去年とは違う薄いブルーの浴衣を纏っていて、なんとなく照れくさいようななんというか。妙に落ち着かない気分になって思わず片手を上げてあかりの頭に落とした。

――なんだ?変なの、俺。

年に数回とはいえあかりの浴衣姿なんて何度も見ているのに。
頭を捻りながら先に買っておいた改札券の一枚をあかりに渡し、自動機に差し込む。
タイミングよく現れた電車に乗り込んで向かうのは今日はいつもとは違う場所の花火大会。
お互いの誕生日は一緒に過ごす事が当たり前になっていたからあかりと会う事は予定通りだったんだけれど、どこで調べてきたのか花火大会に行こうだなんて誘われて。特別イヤなわけでもないし、ちょっと早く夏を感じるのもいいかもなんて思ったんだけれど。

「駅前から出店が出てるんだな?打ちあげる場所は港だっけ?」

「うん。そうらしいよ?ここからずっと真っ直ぐ先…ほら、パンフレットに書いてあるし。」

「ふぅーん。じゃあ、時間あるし見てくか。」

駅を降り立つと辺りは薄い闇。
建物や街灯の鮮やかな光ではなく、宙に吊るされた提灯と道路の両端に並ぶ出店の明かりで照らされていた。
この年になっても心が浮き立つような辺りが煌めく不思議な空間の中で、隣に立つあかりが胸を張る。

「今日は瑛くんの誕生日なんだから私に任せて!」

「……よし。それならあっちだ。」

「あ!ちょっと待って!置いてかないで!」

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