二人並んで歩く
こんな日限ってなかなか出て来ないなんて。
一緒に帰りたい――なんて、ふと思い付いたら一人で帰るのが堪らなく嫌で。
あかりの部活やってる姿を、図書室の窓から見ながら勉強して時間潰して。
ようやくグラウンドから姿を消したから、すぐに出て来るって思ってたのに……。
校門の外で待ち伏せてたら、他の女子と笑いながら出て来るあかり。
声なんか掛けられる訳もなく、慌てて歩き出した。今学校から出て来て、あかり達にまったく気付いてないふりで。
―――なんで一人で帰らないんだよ。
まぁ? 俺が待ってた、なんて事知るはずないんだけど?たまに気まぐれを起こすと、こうなんだから。
―――それにしても、ちゃんと気付いてるんだろな。あかり。
こんなにも、お前達の見える範囲で、つかず離れず歩いてるんだから。
―――この後、知らん顔したらチョップだからな。
海が見えるいつもの通学路を、不機嫌に歩く。俺の影が先を急ぐように真っ直ぐ伸びて……。でも、なんだか淋しげで。
少しずつ近づくあかりの影が寄り添うように伸びて。俺の影の隣に伸びて。
―――なんだよ。影が仲よさ気にしててもしようがないだろ。
その後、あかりの笑顔が俺を見つめる。
「瑛くん!一緒に帰ろ!」
やっと隣に並んだあかりに、嬉しい気持ちでいっぱいなのに、つい口から出るのは反対の言葉で。
「仕方ないから帰ってやる。」
仲良く寄り添った影と同じように、二人並んで歩く。
―――お前達ばかりいい思いなんてさせないんだからな。
なんて、照れ隠しに影の二人に毒づきながら。
二人並んで歩く
2008/11/04