7.

でも、一方的になんて言っても、きっと細かくお願いしてるはずだよね?昨日は自由行動を一緒にって話してたんだし。

と、言う事は、ハリーは私と瑛くんがそういう…恋人同士になったと知ってるわけで……。

―――な……なんか恥ずかし…っ!

特別な間柄であるその名称を浮かべると、なんだかやけに照れくさいような嬉しいような。しかも、一番の仲良しに自分が知らない間に、知らされていたなんて。

カッと熱くなり赤くなった頬を両手で挟むとぐいと肩を押され瑛くんにちらと視線を向けた。

「……変な顔……まぁ、それはいいんだけどさ。ここ、甘味処。本当はこっちがいいんだけどウチの生徒が多そうだし、ここならちょっと足を伸ばさないとだから…穴場っぽくないか?」
「ひどっ―――って。甘味処……?なんか、珍しいね?瑛くんなら、有名な洋菓子屋さんとか言うかと思ったけど……。」
「おまえ、ホントにバカ。せっかく京都にまで来てなんでケーキとかなんだよ。京都だぞ?上菓子とか京菓子だろ。」
「んーーー?八つ橋とか?」
「そっ…それは…まぁ…みや…。じゃなくて、ほら、茶席なんかで出される…こう、そうそう。こんな感じの―――。」

顔にくっつくほど近づけていたガイドブックをまたお互いの間の肘当てに置き、思い出したようにぱらぱらとめくり始める。

その手元を見下ろしていると、あるページのカラー写真をとんとんと指差した。

「わ。可愛いー。お花だー。」
「これは春のやつらしいから、今はないんだろうけどさ。なんか、いいだろ?」
「うんうん。可愛い!食べちゃうのがもったいないくらい。」

瑛くんの言葉通り、桜色と薄緑で形作られたそれは、ふわふわとした見た目の春らしく華やかで上品な花。
ガイドブックにある「季節を表現している」という事は、きっと桜なんだろう。
暦の上では秋の今なら、紅葉とか…銀杏やモミジとか。

顔を寄せてお互いの興味がある店や建造物を指差し、あれこれと行き先を決めていく。

半分諦めていた瑛くんとの自由行動が現実味を帯びて気がして、目的地までどんどん近付く新幹線のスピードに合わせたように、私の心も浮かれ始めていた。



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テーマ「人外ファンタジー」
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