3.

「あ、いたいた!あかりちゃん!私達と一緒に―――って…もしかして…誘うの…遅れたかなあ…。」
「え…っと?」

京都まで一直線な新幹線の中。
クラスで仲がいい女の子達数人と、与えられた車両の適当な座席を物色中、通路に立つ生徒達の間を縫うようにやってきた女の子に声をかけられる。
人懐っこそうな笑顔の、でも雰囲気のいい女の子はもちろんクラスメートではなく、去年も別のクラスだったはず。
名前も分からなければ顔も――。
いや、顔は知ってる。どこでだったのだろう。ただ、名前で呼ばれる程顔見知りなはずがない。

―――この子、どこで会ったんだっけ?

座席の数と私達を指で確認し始めたその女の子の顔をまじまじと見つめていると、不意に腕を組まれ意識を戻した。

「じゃあ、あかりちゃんもらってくね!」
「ええっ!?」
「こっちこっち。私達は2つ先の車両だよ?あかりちゃんを探すの、大変だったんだから。」

戸惑う私に気付かないのか、強引に腕をひく彼女に引きずられるように、通路を塞ぐ生徒達の間をすり抜け動き出した車内を歩く。
彼女の言う通り、今までいた車両の2つ先。羽学に宛がわれている車両の一番先端にたどり着いた。

「おっせーんだよ。」
「仕方ないでしょー?探すのだけで大変だったんだから!」
「ハ、ハリー!?に………瑛っ――!?」

つい名前を叫びそうになり慌てて口を押さえる。向かい合わせにセットされた座席の窓際には、ハリーと何故か瑛くんが向かい合って仲良く座っていて、私の顔を驚いたように見つめた。

「ほらほら、二人とも立って立って。女の子には静かで景色のいい窓際を与えなきゃダメでしょ?あ、佐伯くん。あかりちゃんの荷物、上にお願いしていい?」
「あ……、うん。」
「ホレ、あかり。佐伯の隣、早く座れ。」
「え?あ……、はい――。」

私から奪ったバックを女の子に押し付けられた瑛くんが、勢いに押されたように立ち上がり棚に上げる。一度通路に出たハリーに催促され、なにがなんだか分からないまま通路側に座りなおした瑛くんの隣に腰を下ろし顔を見合わせる。戸惑ったような表情は瑛くんも状況を把握していないらしく、満足そうに並んで座るハリーと女の子を二人して見つめた。



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テーマ「人外ファンタジー」
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