14.

瑛くんだけが知っている一番敏感な場所。

単調ではない複雑な指の動きがそこに集中し、外に向けていた意識があっさりと戻る。何かが私の中から波のように少しずつ大きくなる。

「んッ…んっ…は、んッ…!」

どれだけ堪えようとしても唇の隙間からくぐもって漏れ、唇を噛みしめながら上半身を捻り瑛くんに顔を向けた。出せない声の代わりに首を振り見つめながら必死に訴える。

―――お願いだからもうやめて。

暗闇の中でも分かるくらいの距離。
窺うように見つめていたらしい瑛くんの瞳とかち合った。その興味深そうな好奇心に満ちた瞳の色が益々強くなり、口許に薄く笑みが浮かぶ。
その瞳が目配せをするように動き私への刺激が弱く緩められるのが、言いたい事が届いたからだろうと一瞬身体の力を抜きかけるも、それを見計らっていたようにすると下ろされる指先が探られたくない場所を捕え確かめるように円を描く。その動きと何処か嬉しそうな、楽しげな瞳に両足を挟んで抑え込み顔を背け、恥ずかしさのあまり目を閉じる。

「……こんなになってたら、ここで止めるの。ツライ、だろ…?」

くるり、くるり。
その部分を避けるように、その部分から溢れたものを広げるように円を描く瑛くんの指。
耳元で囁く声は数秒前に見た嬉々とした瞳を思い起こさせ、この密室内の行為を止めるつもりがないどころかエスカレートさせる気満々だという事を感じ、何度も首を左右に振った。

「……―――ん、ッ……!ん、ん…っふ……!」

私の両足に挟まれ動かないはずの瑛くんの腕がずずっと脇腹を擦る。擽るように円を描いていた指先が濡れるその中心。私の中へとゆっくりと段階をつけて入り込んでいく。

―――痛みのない妙な圧迫感。

そのせいなのか、細く長い瑛くんの形がはっきりと身体で感じられた。曲がった指が感覚のある数センチだけを押し広げ壁を擦り外に出る。その度に腰が震え瑛くんの指ごと下着を濡らすのが分かる。ほんの僅かな、微かな水音までも聞こえる。それくらい私の身体も神経も敏感になっていた。

「……ん。…ぐッ……は、…んふッ…。」

「…いつもより…いい?」

「ん…ッ。…んん…ッ!」

外で繰り広げられいるはずの教頭先生のお説教は時折音として流れてくるだけで、すでに私の耳には届かない。
ぐっと奥までそしてお腹が鈍く痛むぐらい壁を擦られ、いつの間にか瑛くんの指は数を増し面積を広げ私の中を何度も出ては入る。背中を預けたまま口を塞いでいた片手は板間につき声を漏らさないように片方の腕を強く噛んだ私は両足で体重を支えその動きを、私の中の快楽を、求めるように、強めるように、身体を揺らす。

―――隣にいるかもしれない誰かに知られる、自分の声が聞こえてしまう。

「…ぐ、ふッ…ん、はぁッ、ぁ…ッ!」

「イっていいぞ……?」

「…ぁ…は、ぁ…ッ!―――ん…ッ?!」

止めるべき行為なはずなのに、身体に流れる電流のような快感は正常な判断を私から奪う。閉じていたはずの両足は開き、さらに深く身体を被せた瑛くんの空いているもう片手の愛撫まで許している。奥深くで掻き回される私の中。
それとは違い血液を集め膨らんだ一番敏感な部分を押さえつけ小刻みに震えさせる指先。
身体の奥深くから大波のように痺れるざわめきが頭へと流れびくびくと震え出し察した瑛くんの声に頭を振る。

これ以上は押さえきれない。
この快感も、漏れる声も。

そして閉じられる唇。自分の顔で私の手を振りほどいた瑛くんの唇が私に重ねられる。こじ開けらた唇から巻きつかれた舌が吸い上げられ、それがスイッチとなる。

「ぐふ…ッ!…ん、んッ…ぅ、ぁふ…ぁぁッ―――!!」

白く白く輝く光。
それは呼吸を止められたからではなく私の内側から込み上げてくる快感という名の光。止まらない波に抗えずくぐもった声を瑛くんの中に吐き出しながら、がくがくと身体を震わせその腕の中で絶頂を迎えたのだった。



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