1.
「もしもし?……俺。起きたか―――?って。こら、寝るんじゃない。どうだ?起きたか?………よし、ちゃんと起きたな?二度寝して寝坊するんじゃないぞ?…じゃあ…またあとでな?」
寝ぼけながら通話ボタンを押して耳に当てる携帯から届く聞き慣れた声の持ち主は、一言も返事を返さない私を特に気にする様子もなく、なぜか上機嫌でひとしきり話した後唐突に電話を切る。
まだぼんやりとした頭の中に響く、通話が切れた後の機械音が強制的に途切れる頃、やっと意識がはっきりとし始め窓に顔を向けた。
カーテンの僅かな隙間から覗くまだ日も昇っていない外の薄闇に、おおよその時間を知るとア然としながら呟く。
「…………。瑛くん…起こすのかなり早すぎだよ……。」
学校行事……特に何泊も店を開ける修学旅行は面倒だの、やっぱり店に出てたいだの、相当文句ばかりを並べていたのに…本当はものすごく、本当は人一倍楽しみにしてたんだろうか。
あの、誰よりも素直じゃない、あまのじゃくな私の…………たった一人、大切な彼は。
恋は砂糖で出来ている