13.

膨らみに触れていた瑛くんの片手が伸び、ぱたぱたと床の上を探しながら携帯を掴む。

電話かメールかと思った電子音はアラームだったらしく、片手で操作しながら膨らみに軽く口付け顔を上げた。

その小さな口付けの音にびくと身体が震える。
手早く身を整える瑛くんの指先が肌を掠めるたび、それすらも敏感に感じる自分に唇を噛み締めた。

「…こういうのも…なかなかよかった、だろ?」

ぐいぐいと体操服を引き下ろす瑛くんの声はどこか楽しそうでハッと顔を上げる。

声のままに楽しそうな悪戯っ子のような瞳。

……また、からかわれたんだ。突然こんな場所でなんてあるわけないもの。

「――――瑛くんのばかっ!」
「プッ……甘い。」

そんな事にも気付かず感じていた自分があまりにも恥ずかしく、真っ赤になった顔を自覚しながら片手を振り上げて下ろす。

そんな事などお見通しだと笑顔を浮かべる瑛くんに手首を捕まれ、涙目になりながら見つめた。

「そんなに怒るなって。少しだけおまえを感じたかっただけなんだって。…思ったよりあかりが感じてくれたようだけど?」
「て、瑛くんっ!!」
「プッ…冗談。じゃあ、そろそろ戻るか。消灯時間も近いし。あ、悶々として明日寝坊するなよ?」
「も、……瑛くん!!」

ちっとも悪かったと思ってない口ぶりに掴まれたままの手首を振り払おうとぶんぶんと力任せに振る。と、くすくすと笑ったままの瑛くんが立ち上がりながらその手を引いた。

ふわり。

つられたまま身体が浮き上がり、同じように立ち上がった私の身体が瑛くんの胸の中に収まる。

一度ぎゅうっと強く抱きしめられ、そっと離された。突然の事に怒る事も忘れた私の顔の高さに合わせて屈んだ瑛くんに軽く口付けられる。

「……おやすみ。また明日、な?…好きだぞ?」

そっと頬と唇を指先で撫で目を柔らかく細めると、私の脇をすり抜けた瑛くんが、男子部屋のある階下へと軽やかに階段を下りていく。

その軽快な足音を背中で聞きながら、急に全身の力が抜けた私はその場にぺたりと座り込んだ。

「…………瑛くんの……ばか。本当に眠れなくなるじゃない。」

急に格好よく見えて目が離せなかったなんて…明日会っても言ってやらない。

耳に残る声と身体に残る感触に、しばらく動けず座り込んだままでいたのだった。

恋は砂糖で出来ている<前編>
END



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