5.我ながら完璧な舞台設定

そしてその翌日の昼休み。

一方的な呼び出しだけど、アイツがバックれたりするなんて性格的にありえねぇから、音楽室の真ん中辺りであかりを座らせて待つ。

引き戸の上の方にある小さく細長い窓に気配を感じ、作戦決行。
そこからちらりと見えた影と気配が消えた。

―――うまくいったみてぇだな。

あかりを引き寄せていた手を離し、大袈裟に身震いして立ち上がる。
ぼんやりのあかりはさっきの気配に気付いてる様子はない。

―――さすがオレ様。主演男優賞モンだよな。

あとは、アイツが勝手に煮詰まって自爆を起こしてくれるのを待つだけ。
オレ様は高みの見物とさせてもらうからな。
ったく、ここまでお膳立てしてやらないと動けねぇとか、お子様すぎて笑えもしねぇ。

さて、あのバカが行動に出るのは今日か、明日か。
まぁ、どうなろうとオレ様の知ったこっちゃねぇか。
今日はバイトもねぇし、バンドの練習もねぇし。旅行中の暇潰し用に新しいCDでも物色して帰るかと、下駄箱に向かう。

背中から聞こえてくるのは誰かの足音。

―――来たか。

授業をサボっていたのはクラスのオンナどもが話してたから、どっかのタイミングで動き出すとは思ったが、先にオレ様にかよと、足を止める。

「……おまえがどうであれ、あいつだけは渡さない。あいつは…あかりは、俺だけのものなんだ。昔も……今も。これからも。」

肩を掴む手とオレを真っ直ぐ見つめる瞳には怒りのような、憤りのようなものが溢れている。

―――バーカ。言う相手を間違えてんだよ。

顎で示す先は、このバカが本来話すべき相手。
校門を出ようとするあかり。

それを確認すると、弾かれたように走り出す佐伯。

他の生徒を押し退けるように去っていく佐伯の背中を見送りながら思うのは、アイツに反復横跳びさせたら右に出るものはいねぇくらいウマいんだろうなーって事。

「んじゃ、ま。オレ様も帰ることにしますか」

優等生のはずの佐伯の形相に驚いたような生徒達をゆっくり追い越しながら、あまりにも上手くいった作戦に大満足したのだった。

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