1.見てるこっちがハラハラ

その二人の間になにかしらが起こったらしい。

そんな勘が働いたのは、昼休みの音楽室。

いつもの席にいつものように座る佐伯が、オレが閉める扉の音にも気付かずにぼんやりと自分の手を眺めていたのを見た時。
顔を覗きこんだ時の狼狽えようがアヤシイと思ったけど、それが確信に変わったのはオレとあかりに割り込んだ時のアイツの焦った顔。
あれでポーカーフェイスを気取ってるんだから、かなり笑える。鏡があったら見せてやりたかったのによ。
まあ、無意識なんだろうけどオレ様にまで警戒心を持つっつー事は、かなりイイ感じになってんだよな。
こいつはちょっとばかし本格的に突っついてやれば気付くのもすぐ。と思ったのはオレの錯覚だったらしい。

そして、同じようなニブちんがもう一人。
机の中を漁る佐伯をヘンに意識して挙動不審になっているあかり。
明らかに男として佐伯を見ているはずなのに、どうやら本人はそこに気が付いてねぇ。
もちろん、相手であるはずの佐伯はそれに輪をかけて。

「……ここまで来ると漫才みてぇだよな。」

思わず呟いてしまったオレの独り言が気に食わねぇらしい佐伯が睨み付ける。
そのあまりの幼稚な態度と、鈍感なあまりの頭の回転の悪さに、ほとほと呆れながらやけに食いつく佐伯を蹴散らすように手を振り話を遮断させた。
勉強が出来るからって言ったって、こいつは本当にバカだから何を言っても通じるわけがねぇ。

羽学のプリンス様の正体が、実は小学生以下のガキでした。なんて、この学園の男子生徒全員に教えたら、サギだとか喚きたくるんだろう。
まあ、佐伯がガキだから言い寄る女子達をのらくら交わす事が出来るんだろうけどよ。
普通ならっつーか、一般の男子高校生ならうっかり舞い上がって勘違いヤローに一直線、だもんな。

そこまで徹底して完璧なガキだからこそ…この、オレ様が、らしくもなくこの二人の事を気にかけてばかりいるわけだ。
ホント、この間からガラにもねぇ事ばっか言ってるんだよな。

prev 1/6 next
しおりを挟む/しおり一覧

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -