4.見てるこっちがハラハラ

「てめぇ…。」
「ご、ごめんごめん。頭貸せ、だよね?私に出来る事があるならなんでもするよ?」
「誤魔化してもおせぇ。ま、それは後回しにしてよ。オマエ、好きなヤツに好きだっつー時…。」
「ちょ…っ!ちょっと待ってハリー。私、そんな人いな…。」
「んあ?あ、違うわ。オマエに好きなヤツができっだろ?そん時ってどうやって分かるよ?」
「……え?」
「だーかーらー!好きなヤツを好きだって分かる時くらい分かるだろっつーの!」

どうしてわかんねぇかなぁと頭をぼりぼりと掻く。
コイツも佐伯やあかりとおんなじぼんやりタイプなら、オレにはお手上げだ。

「ぶっ。コウ…それじゃあ全然分からないよ。ねぇ?苗字さん?」
「えっと…分かる…分かれば…分かれ…?」
「ぜんっぜん違げぇよ!分かるから分かるだっつーの!」
「ブブッ…あはははは!苗字さんナイス!コウも慣れない事言うから意味が通じないんでしょ?意味分かって言ってる?」
「ウッセェ!あー!!もういい!オマエらには聞かねぇ!っつーか、用がないならさっさと帰れ!」

腹を抱えて笑い出した井上にケースの上のカバンを押し付ける。
コイツがいる間は茶化されて話が進まないのは明らか。
それに、苗字はあかりと同じぼんやり決定。
どうしてオレの周りにはこういうヤツばかりなのか。
カリカリとしながら再び椅子を蹴り出し長椅子に戻ると、さっきと同じように足を放り上げて雑誌で顔を被う。

いい加減、さっさとくっついてくれたらオレ様もこんなに苛々したり、井上のバカに笑われる事もなかったのに。

その井上は暫く苗字と話し込んでいたみたいだが、オレが無視を決め込んでいたため帰ったらしい。と、気付いたのは、いつの間にか帰って来た店長に顔を隠してあった雑誌でぐっすりと眠り込むオレの頭を思い切り叩かれ、その痛さに目を覚ましたからだった。

そのあと、自分の事を差し置いた店長にこき使われたのは言うまでもねぇ。
それもこれも、さっさとくっつかねぇアイツらが悪ィんだ。ぜってぇオレ様のせいなんかじゃねぇ。

暑い最中罰として店の前をホウキで掃きながら、ブツブツと文句を言い続けたのだった。

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