3.いい加減くっつけ

チャイムが鳴り終わらないうちに教室を飛び出す昼休み。
抵抗のある鉄の扉を押し開くと、夏が残る青空、太陽の熱を吸収し吐き出すコンクリート。
まだ誰もいない屋上。

「あっちー。こりゃあ、日陰じゃねえとやってらんねーな。」

一瞬で毛穴の開く感覚に嫌気がさし、きょろきょろと日陰と風が通る道を探す。

今日の気分は屋上とあかり経由で佐伯にも話はいっているハズ。
アイツらなら、テキトーに探し当てるだろ。と、いつも生徒が使う方ではなく、反対側。
風が通り、日陰があり、背もたれにする壁があり、給水タンクの配管がいい角度で足置きになる屋上の扉の裏側にやってきて腰を下ろす。

この間は散々オレの弁当を突き回した二人が、ワビとして超熟カレーパンを買ってくるハズだし、それまではひと眠りでもすっか。と、ケツをずらし両足を組みながら配管に上げた。

視界に広がるのは真っ青とまではいかねぇが、どこまでも続きそうな空。
なんとなくアップテンポなメロディーが浮かびそう……だと思ったところで、誰かの声が聞こえ、頭の中からぽろりと抜け落ちバリバリと頭を掻いた。

「あー、イイ感じだったってのに、誰だよこんなトコで!」

ぼそぼそと聞こえる声の中に、毎日といっていいほどによく耳にする声があった。
他とは違い珍しく戸惑ったような、困惑が滲み出たような。

「なーにやってんだ?アイツ」

よいせと座り直し配管の隙間から覗き見る。
そこにはヤロウばかりに囲まれた佐伯の姿。
聞こえてきた声と同じように、背中にも戸惑いが見えるが、周りのヤツラに気付いた様子はない。

別に隠れる必要もなさそうだが、こんなところにいるくらいなんだし、込み入った話なんだろうかと配管伝いに近づき聞き耳を立てる。

「キスする時のタイミングとか、する時のセリフとかー!」
「……相談する相手を間違えてるっつーの…」

開口一番に聞こえてきたバカデカい声に、思わず小さく呟く。
いくらアイツがオンナ共に騒がれていたとしても、オンナを寄せ付けた所にお目にかかった事がない。

例外として一人はいるとしても、そういう意味で、ではない。

「佐伯はぜってー、オマエらよりもおこちゃまだぞ?」

人の事をえらそーに言える立場ではないが、アイツなら知識以前にそんな事すら考えた事なんてねぇんじゃないかと佐伯の様子を窺うと、案の定絶句したまま固まる背中に、ほらなと小さく独り言を呟く。

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