2.いい加減くっつけ

あかりは天然だから置いといて。

……問題はコイツ。

そう、その羽学一のプリンス。
スポーツ万能成績優秀、男女分け隔てなく人当たりのいい優等生で、オンナ達のアイドル。と、いう肩書を持つ男。

今はあかりに手首を取られ「くっ…!秘儀、白刃取りかっ!……なかなかやるな…」なんて、今時、小学生でも言わねーセリフを吐きながら、反対の手を手刀にし頭上に掲げている。

もともと顔見知り程度だった佐伯がここに来たのは、あかりに連れられて、オンナ達の追いかけから逃げて来たんだったか。

正直、そんな完璧なヤツなんているわけねぇ。いい顔してぇだけのいけ好かねえヤツなんて思ってたから、最初はオレの安らぎの空間に連れて来んな。冗談じゃねぇって思ってたんだよな。

別に嫌われたとこで痛くも痒くもねぇから、かなり邪険な態度を見せたはずなのに、なにが気に入ったのかそれからもしょっちゅうここに来るようになって、今では当たり前のようにオレの隣りに居やがる。

佐伯の性格も、本当はこんなガキみたいな……いや、オレ以上にガキな事もすぐ分かったし、なんか理由があって学校ではあんな態度なんだと気付いた。

その辺りはたぶん言いたくねぇんだろうからオレから聞く事はねえけど、どうやらあかりは佐伯の事情も知っている。

……それだけで、あかりは他のオンナ共とは違う、特別なヤツだと気付きそうなものなのに、この、羽学一のプリンスさんは、ガキなうえに激ニブときている。

年中あかりの事を「ぼんやり」だの「ニブちん」だのほざいてやがるが、オレからすれば、他人の感情をさりげなく汲み取れるあかりより、他人は当然として自分の気持ちにも気付かない佐伯の方がぼんやりでニブちんだと思うんだがな。

そう、あまりにぼんやりで鈍感で、ガキすぎるんだ。コイツは。

「わははは。俺のチョップから逃げ切れると思ったのか。…ふっ、甘い。甘すぎる!」

押し問答の末、結局は佐伯から痛い一発を食らって頭を抱えるあかりに向かい、得意げに胸を張って立ち上がる身長180近いただの子供を、つい2、3日前の出来事を頭に浮かべながら、呆れて見上げた。

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