青空の下、二人並んで

いつの間にか高くなった空。地上へと降りる青のグラデーション。果てしなく広がり、何処までも行けそうなくらい遠く広がる。

夏が終わったと感じさせるような、静かになった浜辺。穏やかで優しい波の音を引き連れて、素足のまま波打際を歩く。
打ち寄せる波が足首を擽りながら砂を巻き上げ海へと帰り、二人がその場に取り残される。

―――大丈夫。まだ海は……人魚を連れて行こうとはしていない。

いつかのお伽話が頭を過ぎり、そんな事ばかり考えている俺ってどうなんだと苦笑いを浮かべた。

「ねぇ、瑛くん。今年の夏も楽しかったね?」
「ああ。……そうだな。結構、楽しかった。」
「結構、じゃないでしょ?相変わらずのあまのじゃくなんだから。」

頬を膨らせて波を蹴るあかりの足から舞い上がる水しぶきが太陽の光に煌めき、髪が、スカートの裾が、踊るように風に舞う。
海風に冷やされ、秋の気配を漂わせた柔らかな風。少し物悲しく、少し寂しく。細くしなやかな髪をふわりふわりと。

「………もう、夏も終わり、だな。」
「…もしかして…ちょっと寂しい?」

首を傾げるように俺を覗き込むあかりの瞳が少し悪戯っぽく輝き、答えを待つようにぱちぱちと瞬きを繰り返す。
その子供のような仕草とは裏腹に、やけに鋭い勘を見せるあかりに言葉なく苦笑いを返す。

―――それだけじゃないんだけど、な。

伝えていない言葉、伝えていない気持ち。
遠い記憶と近い感情がごちゃまぜの、時々自分でもコントロール出来ない思いはまだ伝えるには早過ぎて、言葉を濁す俺に何を勘違いしたのか繋げる掌に力を込めるあかり。

すっと伸びるように上がる日に焼けた腕を思わず目で追うと、海の向こうの水平線。繋がる青の世界。何処までも遠く。

「寂しくなるのはまだ早いよ?もう少し、夏を楽しも?来年に繋がるように、ね!」

濃い夏の青を指差すあかりのその先に繋がる明日への日々。同じ方向へと向かって俺を誘う。

「じゃあ……、もう少し…夏っぽい事、するか。俺達だけでも。」

弾けるような笑顔。夏のように強く輝き眩しさに目を細め並んで空を見上げる。雲一つなく突き抜けるような青空の下。

今、この瞬間(とき)が続く事を願いながら。

【朝焼けの出迎え ACT.1】
瑛×主

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