朝焼けの出迎え

漆黒の闇に儚く瞬く星達。強く輝く星がなければ消えてしまうような…きっと目にする事さえ出来ないような弱い輝き達が一面の丸い空に広がっている。

一言も言葉を交わす事なく目には天に広がる星の川を映し、耳に静かな波音を、触れ合う腕には暖かな温もりを。昼間とは違い、ゆっくりと流れる穏やかな時を朝と同じ浜であかりと過ごす。

「…あ。」
「…あ!」

闇を切り裂くような細い金の光が空を切り裂き、二人が同時に声を上げ砂の上で繋がる掌に力がこもった。

「今の、長かったよね?」
「ああ。そうだな?」
「お願い事、出来た?」
「おまえは?」
「……ないしょ。言ったらお願い事にならないもん。ね、瑛くんは?なにお願いしたの?」

ころりと転がり俯せになったあかりが繋いだ手を両手で包み、俺を覗き込む。暗闇に慣れたからか、夜空と同じように輝くあかりの瞳が興味津々と書いてあるようだ。…と言うか、書いてある。かなりはっきりと。

「言わない。つーか。言ったら俺の願いが叶わないだろ。」
「大丈夫だよぉ。瑛くんなら気合いでなんとか出来るから。だから教えて?」
「なんだ?それ。ダ〜メ。かわいこぶっても教えない。つーか……似合わない……ぞ?」
「ひどっ!」
「………ぷっ。あははは!」

何処で覚えてきたんだか、お願いとばかりに俺の掌を挟み小首を傾げるポーズのあかりに、わざとらしくげんなりとしてみせると頬を膨らませ殴り掛かるフリ。

たわいないやり取りが何となく楽しい。

こんなにも同じ時間を過ごす相手が出来るなんて思ってもなかった。そんな相手を作る気すらなかった。それなのに、ごく自然に当たり前のように傍にいる。
たぶん、夜空に輝く星の中でたった一つ見つけた流れ星のような奇跡。

「――――よっ、と。………あ。」

預けた掌はそのままに、反動をつけながら身体を起こすと、空を切り裂いた流れ星が呼んだような薄闇色。

「……あ。もしかして……夜明け?」
「ああ。もうすぐ……。もうすぐ朝がくる。見てろ?綺麗だから……。」

そう。願ったのは―――この瞬間をおまえと過ごす事。

一瞬たりとも目が離せない色の移り変わりを、新しく彩られる一日の始まりを一緒に迎える事。

まるで―――あかりの豊かな表情のような、同じ色が一つとしてない。

そう、今のおまえの輝く笑顔のような。

世界の始まりをこうやって、手を繋いで。

いつかは心も繋げられる事を祈って。

【朝焼けの出迎え ACT.5】
瑛×主

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