流れ星に願い事

「やっぱり行ってよかったよね?」

弱く瞬く星の下、時折隣を走り抜ける車のライトが行く先を照らし出し、寄せる波音だけが辺りに響く。
昼間の熱を残すアスファルトは夏の名残を残すように足元を暖めるけれど、首筋を撫でる風はひやりとしていて興奮した身体を冷やし通り抜けていく。

少し手前のバス停を降り手を繋いで歩く海岸通り、あかりの向こう側に見える暗闇の海とは対称的に満足そうな晴れやかな笑顔につられ思わず口許が緩んだ。

「まあまあ…だな。スレスレのギリギリで合格、ってとこ。あかりが楽しんだからよし、って感じぐらいの。」
「もう!素直じゃないんだから。瑛くんだってナイトパレード見て、すごいって言ってたよ?」
「ナイトパレードだけ、だろ?確かにあれは相変わらず凄かったけど、他はダメ。あ、ジェットコースターは最高だったけど。」
「……それってお化け屋敷がダメだった、って言いたいんでしょ?ただの作りものなんだからそんなに怖がる―――。」
「ウ・ル・サ・イ・!つーか、違うから。楽しくないから嫌いなんだ!」

わざとらしく肩を竦めるあかりの頭に繋いだままの腕を上げ手刀を振り下ろすと『いたい』と頬を膨らませながら反対の手で頭をさすり顔をくしゃりと寄せて舌を出すから思わず噴き出すと、何故かふいと視線を反らされた。

「………瑛くんって、時々卑怯だよね…。」
「なにが!?」
「そうやって自覚がないとこ。………急に優しく笑うのは反則だよ……。」
「聞こえない。自覚の後はなんだって?」
「なんでもないでーす!あ!流れ星!」
「え?どこ!?」
「ほら!あの辺り!すーって流れたよ!」

目を凝らし空を見上げる俺に分かるようにと繋いだ手でその場所を伝えようとするあかり。顔を寄せ合いその手の先に広がる夜空を見上げる。

「……そんなにいくつも流れないか。」
「じゃあ、もうちょっとゆっくりしていこうよ。砂浜に座って、流れ星が出たらお願い事。どっちが3回言えるか競争だよ?」

ちょうど近くにある階段に手を引き浜辺へと誘うあかりに時間はいいのかとか、親が心配するとか…結構頭の中には色々浮かぶのに、なんとなくまあいいかと引かれるままに砂浜へと降り立つ。

柔らかい砂を踏み締めながら、昼間と同じように。
もし…星が流れたら…一つだけ願ってみたい。

あかりの張り切る後ろ姿を眺めながら、そんな事を考えていたのだった。

【朝焼けの出迎え ACT.4】
瑛×主

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