今にして思えば、なんてマセたガキだったんだろう。とは思う。でも、あの時は本気でそう思った。

いつか必ず見つける。って。

五つやそこらの『必ず』なんて、アテにはならないけど。
実際、数年たてばすっかり忘れていて、この年になってようやく思い出した。

でもさ、思い出した俺ってすごいなって思うんだ。
だって、見つけられるはずの当の本人は、いまだに思い出さず俺の隣で笑っている。

「ほら!瑛くん、あれ見て!」

防波堤の上で立ち上がったお前の髪が、風に揺れる。まるで今のお前の笑顔のように、軽やかに楽しげに。

「あれって船だよね?何処にいくんだろ。外国かな?」
「こんなところに居るくらいなんだから、漁船とかタンカーじゃないのか?」
「うわ、瑛くんは夢がないなぁ〜。海は男のロマンなんだよ?」
「なんだ、それ? それ以前にお前男じゃないだろ。」

『ノリが悪いんだから』と頬を膨らませながら歩き出すあかり。
オレンジ色の空の色が、靡く髪を染め上がる。

こんな日には、あの時のお前を思い出す。

寂しげな夕暮れ時の海と、寂しくて泣くお前の顔と、寂しくなるくらい切実な約束。

「ねぇ、瑛くん? 今度の日曜は何処か行かない?」
「別に、いいよ。」
「やった! じゃあ、約束だからね!」

今は、新しい記憶に塗りかえられて、あの時の夕暮れと約束も少しずつ色を変えている。
楽しげに揺れる夕暮れ色の髪と、楽しげに笑うお前の顔と、楽しいだろうすぐ目の前の約束。

いつか、あの時の約束も希望という名に変わりますように。

悲しい約束が現実になりませんように。

この海の色がいつまでも暖かでいますように。
夕暮れと約束 瑛×主
11.05/03

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