シトシトと降り続く雨が、差した傘の先から音楽を奏でるように落ちる。

いつの頃からか、雨の日が好きになっている僕がいた。あんなに澄み切った空が好きだったのに。
雨なんて、制服を濡らすだけの邪魔なものだ。なんて思ってたのに。

少し楽しい事があっただけで、キライなものがスキになるなんて不思議だと思う。
色とりどりの傘の波の中、キミの姿を探してる僕。

『何処にいるんじゃないだろうか』と期待に胸を膨らませる時間は楽しくて……。

『今日は何処にもいなかった』とがっかりとする時は寂しくて。

それでも雨が降る帰り道はまた偶然が起こるんじゃないかと、傘の先の透き通った雫の間からキミを探している。

―――次に会った時には、名前と……それから電話番号と……。

優しく降り続く雨の中、キミの姿を思い浮かべている。
もし、今日出会ってしまったら何て話し掛けようか。

「ずっと、キミを探していたんだ。」

そう素直にいいたいけれど……。

「今日は傘、持ってたんだね?」

きっとそんな嫌味を言ってしまうんだろうね、僕は。そんな僕に、ちょっと怒ったような顔をするキミが思い浮かぶよ。
僕は、きっと怒った後の弾けるようなキミの笑顔が好きなんだ。だから……、この降り続く雨の中、キミの姿を探して……。

もう少しだけ、偶然に甘えて……。

「赤城!何やってるの?行くよ!」
「今行くよ!」

……残念。タイムリミット。

仕方ないな。今回はキミを見つける事は出来なかったけど……。

また、次の雨の日にはキミの姿を探すんだろう。

今日みたいな優しい雨の中で。
雨降り帰り 赤城×主
11.05/03

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