美奈子が学校に来なくなって、もう3日。流行りの風邪はなかなかしぶといらしい。

いつもなら居るはずの隣の席がぽっかりと空いていて、それが何だか淋しげで。まるで俺の心が現実に現れてる。そんな感じがする。

―――何処を見てもお前が居ないんだ。

教室、廊下、階段、校庭、屋上……。

猫達が居るこの場所にも。

―――何処にもお前が居ないんだ。

「……なぁ。俺が家に行ったら、美奈子は怒るだろうか。お前ならどう思う?」

言葉の通じない猫に聞いたって仕方ないんだけどな。ただ……、自分を勇気づけたいだけだ。俺があいつに……。美奈子の傍に、もっと近づいてもいい。

……そう誰かに言ってもらいたいだけなんだ。

5日目の学校帰り、我慢出来なくなって美奈子の家までやって来た。美奈子の母親は、美奈子と同じ笑い方と空気を持っていて…… なんだか嬉しくなった。

あっさりと通された部屋は、美奈子らしく優しげで暖かで。そして美奈子の香りで満ちていて。
部屋の中に進むと、ベットに横たわった美奈子。もう、熱はないのか顔色はいい。

規則正しい息遣いで眠るお前は、まるで眠り姫。

例えば、俺の口づけで目覚めたら…… 俺がお前の王子になるのだろうか?

……なんて、そんな事なんて出来やしないけど。

今は、俺の傍に居てくれるだけで満足だから……。

もうしばらくこのままで。

眠り続ける姫の顔をそっと覗き続けた。
眠り姫と王子 珪×主
11.05/03

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