いつもとは違う学校の雰囲気。
何となく落ち着きがないような、浮かれたような不思議な感じ。

……何か……あるんだろうか……。

普段は関心が持てない学校だけれど、流石に今日は周りが気になる。それでもやはりというか、当然というか。午前中の授業と休み時間の殆どは柔らかい日差しに負け穏やかな時間を過ごし。やっと目の覚めた昼休みに体育館裏に来ている。

いつもよりざわざわと騒がしい教室とは違い、のんびりとゆっくりした時の流れ。指の動きにじゃれつく猫達を相手に、自然と顔も綻ぶ。

「あ、珪くんみ〜っけ。やっぱりここにいたんだね?」

明るい声に顔を上げれば、軽やかに髪を揺らすお前が手を振りながら小走りに駆けてくる。いつも変わらない笑顔、昔から…ちっとも変わらない。

「猫ちゃん達にご飯あげてたの?」
「……ああ、新しいの見つけて。」
「あ、ホントだ。気にいってくれた?」
「ああ、……コイツら、よく食べた。」

空いた缶を掲げて何やら見ていたが、俺の言葉に『よかったね〜、珪くんに買って来て貰えて』と仰向けで俺の指先にじゃれていた子猫の腹を撫でる。ふと触れ合う指を絡めると心が落ち着く。

「……6?……いや、5…か?」
「なにが?」
「いや、……なんでもない。」
「ふふっ、変な珪くん。あ、そうだ、私これを渡そうと思って探してたの。」

くすくすと声をたてながら絡めた指から温もりが離れ、今度は目の前に小さな箱が差し出される。

あまり大きくもないそれは、少し不器用に飾られていて……。

「もしかしなくても忘れてる?今日はバレンタイン、だよ?」
「…バレンタイン…?……ああ…だからか。…開けていいか?」
「いいけど…笑わないでね?」

理由を聞いてしまえば、今日の学校の空気にも納得がいく。

そして分かってしまえば嬉しさに口元が緩む自分を自覚しながらそっと包みを開け、中から出て来るのは……。

「……猫……?」
「よかった〜!ちゃんと猫って分かってもらえて!」
「よく出来てる…と思う。猫に見える。ちゃんと…。」

ホッと胸を撫で下ろす姿にますます緩む口元を隠し切れず、込み上げる喜びも衝動も抑え切れずその細くて白い指を自分の指に絡める。

まだ、気持ちは伝えられないけれど…俺のこの気持ちがこの指先から伝わればいい。臆病な俺はまだそれくらいしか出来ないけれど……。

いつかちゃんと伝えられる、そんな日が来る事を夢見て。この甘いチョコに同じ気持ちが込められていると信じて……。


伝えたい思い 珪×主
11.05/03

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