とある乙女の華麗なる日常 | ナノ
episode12


小学校の先生がよく言ってました。
「お家に帰るまでが遠足です」って。


「ねえ優姫?」

「なあに、珠姫」

「ここはどこだと思う?」

「わかんない」


太陽はとうに沈み、空は真っ暗。
夜の山はさらに暗いんですよ。
吸血鬼だから周囲は見えるけどさ。

確かに元来た道を戻ったはずなのに、歩けど歩けど屋敷の姿は見えません。
それどころか、全然景色が変わらないんだけど。
右を見ても木、左を見ても木、前を見ても木、後ろを見ても木。
ええ、確かに家は山奥にありますけどね。
だから基本的に車移動なのでふもとまではずっと道路が敷いてあるのですよ。
でも、私たちが歩いているのは完全なる山道。
すっごい自然のまんま。
っていうかもはや道じゃなくない?木の間を通ってるだけじゃない?

え…え…、まさか?
言いたくないけど、信じたくないけど、これは……


「迷っちゃったねー」


ああゆっきー!そんなにさらっと言わないで!
せっかくどうやってオブラートに包んで言おうか悩んでたのに!
どうしよう!せっかくミッションをすべて終えたのにっ!
お兄様の抱擁と温かいミルクティが私を待っていると思ったのに!
ん…?お兄様??
……はっ!そうだ!
追跡隊の皆さまがいるじゃない!!
私とした事が忘れてるなんて!もう、珠姫のおバカさん☆
きっと皆様、私たちが迷子になってるのを楽しんで見てたんでしょー。
初迷子記念の写真、私にもあとでちょうだいね!


「お兄様ー、お父様ー、お母様ー、おじたまー」

「珠姫?どうしたの?」

「お兄様たちを呼んでるんだよ。一緒に帰ろうと思って。お兄様ぁー!」

「珠姫、お父様たちはお家だよ?」


ゆっきー、君が気付いていないだけで皆ついて来てたんだよ!
………って、あれ?
いない?
いやいやそんなことはない!


「お兄様ー!お父様ー!お母様ー!おじたまー!珠姫はわかってるから出て来てー!」

「珠姫…、不安になっちゃったの?」

「いやいや違うの!だってさっきまで皆いたの!」

「大丈夫、迷子になったって帰れるから。ね?」

「帰れないから迷子になってるんでしょう!?」


え、本当にいないの!?
あれほどしつこく付きまとってたのに!?
もしかしてはぐれちゃったの?
むしろお兄様たちが迷子になっちゃったとか!?


―5/11―

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