とある乙女の華麗なる日常 | ナノ
episode12


「お嬢ちゃんたち、何人家族?」

「ろっ、六人です!」


優姫が言うと、おばあちゃまはその鶏型の籠の中から卵を取り出しました。


「じゃあ六つで良いね。ああでも、どうやって持って帰るかい?」


ああ!それ卵入れだったんだ!
そうか、卵パックとかじゃないんだ!
どうやって持って帰ろう、手で持って…行くわけにもいかないよねー。


「ああ、その籠に入れて行けばいいね」


おばあちゃまが指差したのは、パン屋のおばさんがくれたバスケット。
その中に卵を六つ入れてくれました。

良かった!
ゆっきーがバゲットとバスケットを言い間違えてくれて!
そしてあの愛想のいいおばさんがバスケットをくれて!
おかげで屋敷まで卵に手を塞がれず済んだよ!


「ありがとうございます!」

「おいくらですかー?」


お会計は私にもう任せて☆
と言わんばかりに優姫が張り切ってピンクのガマ口財布を取り出そうとすると、おばあちゃまは手を振りました。


「いいのよ、お代なんて。そもそも商売じゃないんだしねぇ」

「え、でも…」

「いいのいいの。朝になれば鶏がまた産んでくれるからねぇ」


でもそういう訳にもいくまい!
知らなかったとはいえお店じゃないのに押しかけちゃったんだしね(それも夕食時に)
うーん、でもなぁー、ここで無理にお金を渡すのもねぇ。
おばあちゃまのせっかくの厚意を無下にするようで……うーん。

あ、そうだ!

と思い付いてリュックの中をごそごそ探る。
取り出したのは源さんのお店で買った小麦粉です。


「もしよかったら、小麦粉いりませんか?」

「あらあら、いいの?おつかいで頼まれたんじゃないの?」

「二つあるからいいんです。卵のお礼にもらって下さい」

「まあ、嬉しい。ちょうど小麦粉が少なくなってたのよ。ありがたく頂くわね」


そう言っておばあちゃまはにっこりと笑いました。


「「ありがとうございました!」」


そういって玄関を出ようとすると、さっきの女の子が叫びました。


「あたし!高瀬佳代!お名前は!?」

「玖蘭珠姫です」

「優姫です」


ロッテンマイヤー先生のスパルタ指導のお陰ですっかり身についた挨拶をすれば、佳代ちゃんはぽーっと私たちを見つめ続けてました。


「ほらほら佳代、お引き留めしちゃいけないよ。お嬢ちゃん達、もう暗いから気をつけてお帰りなさいね」

「はい!本当にありがとうございました」

「お邪魔しました!」


―3/11―

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