episode12
農家の窓からはあたたかな明りが漏れています。
小さな煙突からは煙がもくもく。
ちょうど夕食の時間だったかな。
忙しいとこすみませんと思いつつもコンコンドアをノックしました。
「はぁい、どちらさま?」
パタパタと出て来たのは可愛らしいおばあちゃま。
「こんばんは」
「ごめんください」
優姫と二人、ぺこりと頭を下げました。
「あらあら可愛いお嬢ちゃん達。こんな時間にどうしたの?」
「あの、卵を分けてもらいたいんです」
「お母様のおつかいなの」
「まあお利口さんねえ。でもねぇ、家は農家だから卵は売ってないのよ」
申し訳なさそうに言うおばあちゃま。
えっ!なんだって!?
「鶏はいるんだけどね、家族で食べる分だけなの」
「えっ、でも粉屋のおじさんがここに来れば分けてもらえるって…」
「ああ、源さんとこね。鶏が卵を産み過ぎたときには親しいお家にお裾分けしているのよ。そういえば明日、源さんのお店に行かなきゃいけないんだったわ」
あのおじさん、源さんっていうんだ…、なんてどうでもいい情報はおいといて
……どうしようか。
「どうしましょうかねぇ。もう日も暮れてしまってるしねぇ。佳代、佳代ー」
「なあにー、おばあちゃん」
「卵は余っているかい?」
「たくさんあるよー」
「ちょっと持ってきておくれ」
「はーい」
おばあちゃまが呼ぶと、部屋の中から私たちと同じくらいの女の子が鶏型の籠を持って走ってきました。
「わあ!可愛い子たち!」
その子は私たちを見るなり目をまん丸にしました。
短い髪がふさふさと肩先で揺れています。
「おばあちゃん、この子たちだあれ?」
「おつかいでね、卵を貰いに来たんだよ」
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