episode11
私たちは煉瓦で舗装された道をてくてく進みました。
左右はどこもお店屋さん。
どうやら商店街のような所みたいです。
すると視界がチカチカと点滅しましたと感じ、上を見上げれば街灯に明りが灯りました。
東の空はとうに暗く、太陽は西の山のかなたに沈んでいきます。
「優姫、はやくお買い物終わらせないとお店しまっちゃうね」
「えー、どうして?」
「人間の活動時間は昼間だからだよ。この前ロッテンマイヤー先生に習ったでしょう?」
「なるほど!」
「あっ、ほら、粉屋さんだよ!」
パン屋差のおばさんが言った通り、思いっきり分かりやすく「こなや」と書かれた看板が左前方に見えてきました。
「こんばんはー」
「ごめんくださーい」
大きな声でそう言うと、お店の奥から出て来たのは少し強面のおじさん。
でも強面っていったって一翁で慣れたからね。
さらに眉毛、抜いちゃったからねww
もっと恐くなったよねwww
そんじょそこらの強面さんにはびびりません。
「いらっしゃい」
おじさんは低い声で言いました。
「お嬢ちゃん達、おつかいかい?何がいるんだい?」
あ、でも見た目よりは親切そう。
さあゆっきー頑張って!
お姉ちゃんは見守ってる!
「小麦粉!ください!」
「一袋で良いのかい?」
「二つください!」
「あいよ。本当は620円だが600円でいいよ」
「えーっと、いち、にぃ、さん、しぃ、ごぉ、ろっぴゃくえん!」
「あい、まいどあり」
パン屋さんの時よりずっとスムーズ!
そしておじさん良い人!安くしてくれた!!
良かったねぇゆっきー。そして成長したねぇ。
ちゃんと100円玉がどれか分かったんだねぇ。
またもやブラックカードを出されたらどうしようかと思ったよ。
でも何で二つも買ったんだろう、一つで良いのにおばかさん☆
と、心の中でほろほろと涙を零しながらちょいと窓の外を見ると、そこには追跡隊の皆さんが覗き見しながら号泣していました。
「(ああ悠!あの子ったらあんなにお買い物上手に…)」
「(さすが僕たちの娘だね、樹里…)」
「(お父様、珠姫が優姫を見て微笑んでいますよ。なんて可愛いんでしょうね)」
「(ぐすっ、あの親父…、粋なことをしてくれる)」
皆様っ!
こっそり尾行してらっしゃるつもりかも知れませんが、全然隠れてませんから!
むしろ目立ってますから!
お店のおじさんも気づいてちょっと引いてますから!
でもおじさん、私たちと窓の外の四人を三回くらい交互に見て「ああ…」と納得したらしいです。
理解のあるおじさんで良かった!
そしてゆっきーは全然気付いてない!
鈍感な妹で良かった!
―2/8―
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