とある乙女の華麗なる日常 | ナノ
episode10


夕暮れの町はまだ人間たちの活動時間。
まだ町はずれとはいえ人間の姿があちらこちらにあります。

さあて、追跡隊の皆さんはついてきているのかしらー?
と周囲を探すと……


「(さ…さすが僕の姪っこたちだな。なかなか良い脚力だ)」

「(お兄様、息が乱れていますよ)」

「(日頃運動不足だからですよ伯父様)」

「(しー!もう少し声を低くしないと気付かれちゃうわ。せっかくの変装の意味がないじゃない!)」


いたー!

お父様はスーツにネクタイを締めて仕事帰りのサラリーマンに扮装。
しかし遠目に見てもそのスーツは一級品でただのサラリーマンではないことは明らか。
それも顔は全く隠していないのでその人離れした美貌はだだ漏れです。

お母様は質素なワンピースに花かごを持って花売りの娘に。
三千歳なのに「娘」とか……なんて思ってないからね!ないからね!私だって命は惜しいわ!

おじたまはくるくるの髪をストレートにしてサングラスをかけています。
その格好はどう見てもヤ○ザ…!ww
おじたま、悪目立ちしてますからっ!

そしてお兄様は……っ!!!
長いつややかな髪、レースたっぷりのカチューシャ、深紅のワンピース。
女の子になってるー!!!
いや…っ、ちょ…っ、それは待て!!
そんな美しい女の子がいるのもかぁああああ!!!
ちょっと女としての自信なくすくらい綺麗なんだけどそれよりも!
なにそれなにそれお兄様が女装とか…!
激レアどころじゃないよ!
「青眼の白龍(ブ゙ルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)」とかのレベルじゃないよ!
「ラーの翼神竜」並みだよ!公式のデュエルでは使用できないんだよ!?神のカードなんだよ!?
はっ!そうだ!カメラカメラ!
こんなレアなお兄様は何が何でも撮らなければ!
華麗乙女の使命として後世に残さなければっ!!!

私が何とかして悟られないように隠し持ってたカメラのシャッターを押そうとした時――


「珠姫!まずは粉屋さんに行こうっ!」

「今は待って優姫!」

「えーっと、こっちかなー?」

「え…、ちょ…!お願いだから引っ張らないでぇぇぇぇぇ」


予想外の優姫の妨害によって隠し撮り失敗。
しかし私が優姫に引き摺られる様子はしっかりと四人のカメラに収められたのでし。


「(ふぅ、珠姫が優姫に引き摺られるなんて珍しい写真が取れたわ♪)」

「(悠、スタッフの配置十は大丈夫か)」

「(抜かりありませんよお兄様。すでに三十名ほどを町に待機させていますし、十名はヘリから、残り十名は僕たちと一緒に追跡しています)」

「(ふっ、さすがだな)」

「(お父様!早くしないと珠姫たちを見失ってしまいますよ!)」

「(そういえばその格好、似合うじゃないか十枢)」

「(その台詞、そっくりそのまま返しますよ伯父様)」


後から知ったことですが、周囲にはこの日のために呼び寄せた約五十名のプロの映画撮影スタッフが変装して町に紛れこんでおり
私たちの一挙一動をあらゆる角度から十台のカメラで追っていたのです。

どうりで小さな町にしてはやけに人口が多いと思ったのよね!


―5/10―

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