とある乙女の華麗なる日常 | ナノ
dream3


「珠姫――!」


ついうっかりと目の前の誘惑に負けそうになった時、頭上から優姫の声が振ってきた。


「もう!急に飛び降りるからびっくりしたじゃん!」


おっと危ない危ない。もうちょっとで欲望のままに零りんを舐めちゃうとこだったよー。
ゆっきーナイスタイミング!


「てへ☆ごめんごめん」

「ごめんって思ってないでしょ!」

「じゃあありがと」

「何でお礼?それよりもこの匂いだよ!たぶん誰かが怪我して……」


そこで優姫はようやく目の前に人間の男の子たちがいることに気付いたらしい。


「え……、同じ顔が二つ……?」


目を丸くして零と壱縷の顔を交互に見比べる優姫。
うんうん、初めて一卵性双生児を見たらそんな反応になるよね。


「ど、ど、どっぺる……」

「ドッペルゲンガーじゃないよ優姫。彼らは一卵性の双子」

「なんだ、そっかー。って珠姫!怪我してるのこの子たちじゃん!……どどどうしよう!」


優姫は慌てて私の陰に隠れた。その手は小刻みに震えている。
擦り傷程度とはいえ、若々しい少年の血臭は鋭すぎる吸血鬼の感覚を刺激する。
ましてや私たちは超箱入りで育った純血の姫。生身の人間の血の香りを嗅ぐのはこれが初めてだ。

だけどゆっきー、そんなに怖がらなくても大丈夫よ!理性を失わなけりゃ平気だから!
私はついさっき、まんまと喪失しかけたけどね☆


「え…、あの…、君たち吸血鬼、だよね?恐がるのは俺らの方なんじゃ……」


怯える優姫を見て壱縷は訝しみながら言った。


「ああ、妹は人間の血の香りに慣れてなくって……って私もだけど。でも大丈夫よ、襲ったりなんてしないから」


パチッとウィンクしたら零りんに睨まれた。
やんっ、恐い♪


「当たり前だ。襲ってきたら即座に撃つ」

「えー、さっきは抵抗しなかったのに?」

「はぁ!?というかやっぱりお前、さっき俺を噛もうと……」

「やだなぁ冗談よ、零りん♪」

「"りん"ってなんだ!?」


零りんは零りんよ。呼びやすくて可愛いあだ名じゃない。
名付けてくれた原作の理事長に感謝よね!


―6/9―

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