とある乙女の華麗なる日常 | ナノ
dream3


――黒主学園、宵の刻。
ギィィという音を立てて月の寮の門が開くと、黒い制服の普通科生たちが小さな歓声を上げる。

「かっこいい〜」
「ステキ……」
「玖蘭様…!」
「珠姫ちゃーん!」

名前を呼ばれた方に向かって手を振れば「かわいいー!」なんて叫ばれた。
ふふん、ちょっと芸能人になったみたいで悪い気はしないわよね。

夜間部が設立されて一ヶ月。
出待ちの生徒は日増しに増えて、今は二十人くらいが毎夕門前に集まっている。

まだそんなに多い人数じゃないから大きな騒ぎにはならないけど、これからもっと増えるよね。
原作みたいに何十人もが詰めかけたら、風紀委員もいないのにどうするんだろ。
この世界ではゆっきーはこの通り純血種として夜間部にいるし、もう一人は……。

今頃中二くらいだよねぇ。あぁ〜会いたいな〜。学ランとか着てたらたまんないな〜。
そういえば前に夢で見た記憶がうっすらと…。あれいつだったけ?
山奥の湖のほとりみたいな場所にいたんだよね。長期休暇中に夜狩さんとこで修行中だったのかな。
そんでもって普段は地元の中学に通ってたり?

……ちょっと待て。あんな銀髪の可愛い双子がその辺の中学に通ってたらそれこそ騒ぎにならないか?
あの見た目でハンターでしょ?運動神経も抜群でしょ?確か頭も良かったよね?
絶対目立つしモテるでしょ!先輩からも後輩からも大人気でしょ!?
帰り際、靴箱に小さな手紙が入ってて体育館裏に行けば三年の美人で有名な先輩が待ってて告白されるやつでしょ!?
だけど興味ないって断ったら泣いちゃって、そしたらその先輩の元カレのヤ〇キーが逆切れして仲間連れて殴り込んでくるんでしょ!?
でもそんなゴロツキたちも二人で返り討ちにしちゃうんでしょ!!
地元じゃマッ↑ケッ↓シぃ↑ラぁ↓ズぅ〜↑ってやつでしょ!!!


「珠姫、」


なんて軽く脳内トリップしていると、お兄様に呼ばれた。
その瞬間、目の前の段差に足を取られて体が傾く。

転ぶ!――――と思ったら、すかさずお兄様が抱きとめてくれました。


「どうしたんだい、ぼーっとして。危ないよ」

「ありがとう、お兄様。ちょっと考え事しちゃって…」

「珠姫様!お怪我はありませんか!?」

「大丈夫よ、英」


危ない危ない、純血の姫が公衆の面前でこけたら大変なことになるわ。
膝でも擦り剥むいてちょっとでも血が出ようものなら大惨事だもん。
さらに他の男の子のことを考えてただなんてお兄様にバレたらたちまち地獄絵図まっしぐら。
わずか創立一ヶ月で月の寮が廃墟と化してしまう。それは回避せねば…!

一ミクロンたりとも気付かれないように、躓いちゃって恥ずかしい…という風なはにかんだ笑みでお兄様を見上げた。


「転ばないように手繋いでて?」

「もちろん」


こてんと小首を傾げて片手を出せば、嬉しそうに握ってくれるお兄様。
その様子を見ていた普通科の女の子たちは、きゃあきゃあと黄色い声を上げていた。


「ご兄妹仲いいわよね〜」
「イケメン様と美少女…尊い…」
「ほんと絵になるわぁ」


なんか一部の女子から拝まれてる。
分かるよー、その気持ち!お兄様のご尊顔はまさしく神の御業よね!
私も心の中で崇め奉ろう!
はぁぁああん!麗しぃぃぃいいい!!!!!


―2/9―

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