とある乙女の華麗なる日常 | ナノ
dream2


真っ白なジャケットは芸術的なまでのシルエットを描き、首元に見える漆黒のシャツが真紅のネクタイを引き立たせる。
ぴっちりと着こまれたベスト、薔薇をモチーフにした校章のタイチェーン、袖口には煌めく純銀のダブルカフス。

ぎゃああああああああああああああああ!!!!!!!
く…、く…、く……玖蘭枢様だあああああああああ!!!!!!

いやこれまでの十三年間一緒に暮らしてきたのも正真正銘の枢様であり私のお兄様なんだけれども!!!
夜間部の制服に身を包んだこの姿こそ『玖蘭枢』って感じがする!!!
なんというかね!!!オーラがやばい!!!
原作で何度も何度も目にしていたけど生の迫力は桁違いだわ!!!
どうしよう、興奮のあまり久しぶりにサケーブからトケツスールへ二段階進化しそう!!!
ダメよ珠姫!!袖を通したばかりの制服を汚すわけにはいかないわ!!
せり上がってきた血を飲み込むのよ!!!ゴフッ……あ、ちょっと零れた……。
でもまだシャツだけしか着てないからセーフよね!?
ちょこっと血痕が飛び散ったかもしれないけど、黒だしきっと目立たないはず!


「あれ、珠姫……、何だか甘い匂いがするね」


お兄様は私のうなじに顔を近づけて匂いを嗅いだ。
……ヤバい、吐血したってバレる!


「そ、そう?ボディクリームの香りかなぁ?」

「まだ髪が濡れているね。おいで」


どうにか誤魔化した私の手を引いてお兄様はドレッサーの前に座らせた。
最初にヘアオイルを髪に馴染ませてからドライヤーの温風を当てて手際良く髪を乾かしていく。
いつもメイドさんにお任せしていたから、お兄様にこんなことをしてもらうのは初めて。
ブローもプロの美容師並みだし。こんな技術どこで覚えたの?


「お兄様、上手ね」

「そうかな?」


鏡越しに目が合ったお兄様はすごく楽しそうだった。
髪が終わったらジャケットを着せられ、リボンを結ばれ、仕上げに校章のネックレスを付けられる。
お兄様に手ずからお世話してもらうなんてドキドキする!!

白い制服を着た私をゆっくりと眺めると、お兄様は眩しそうに微笑んだ。


「お揃いだね。よく似合うよ、珠姫」

「お兄様こそ、すごく格好いいわ」


ああ、いくら見つめても飽きない……。
出来るならこのお麗しいお姿を永遠に瞳に映していたいくらい……。


「……ん」


どちらからともなく顔が近付いて唇が重なる。
最初はゆっくり触れるだけ、そうして角度を変えながら何度も。
徐々に深さを増していくキスが気持ち良くって、頭の芯がとろけていく。


「……ぁ……、んんっ……、……おにぃ……さま……」

「……これくらいにしておかないと、止まらなくなってしまうね」


名残惜しげに離れていく唇を少しでも引き留めたくて、上目遣いでおねだりする。


「……ね、……もっかいだけ」

「…………続きは今夜帰ってからね」


耳元で囁かれたのはあまりに艶めいた声だった。
ちょ……っっ、お兄様!その色気は致死量です!!
でもお兄様も今ちょっと、いやだいぶ迷ったでしょ?いつもより沈黙が長かったもん!
まぁいいや。本当はもっとしたいけど、ここはさくっと引いておこう。


「はぁい。じゃあ優姫もいるし、一度向こうに戻るわ。……寮長様、お部屋の前まで迎えに来てね」


くるりとスカートを翻してわざと内腿をチラ見せさせる。
トドメに小悪魔めいた笑みでぱちりとウィンク。
指先を伸ばしかけたお兄様はあえて無視してクローゼットの扉をくぐった。

だって私のおねだりを聞いてくれなかったんだから、お兄様も『待て』を覚えるべきでしょう?


―7/9―

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