とある乙女の華麗なる日常 | ナノ
dream2


「え……?」


ゴシゴシと目をこすってクローゼットの扉を凝視する。何の変哲もないアイボリー色の扉だ。
もしや幽霊!?いやでもこの気配は……

扉に近寄って恐る恐る開けると、そこにはこの世界で一番麗しいお顔がありました。


「お兄様……!?」

「もう寝てしまったのかと思ったよ、珠姫」


何で私の部屋のクローゼットにお兄様が?
それもすでにゆったりとした寝間着に着替えていらっしゃる。

え、もしかして本当のYO・BA・I?
やだわお兄様それならそうと事前にそれとなく仄めかしてくれないと乙女には色々と準備ってものがあるのよ!
いえ心の準備はいつでもバッチリオッケーですけどね!
だけど何でクローゼットにいらっしゃるの??


「目が赤いね……。泣いていたの?」


お兄様はそっと私の目元に触れた。


「だって……、お兄様と一緒のお部屋だと思ってたのに、別々だなんて……」


口にするとまた涙がぽろっと零れてきた。
お兄様はそれを優しく拭う。


「ごめんね……。最初は僕と一緒の部屋にしていたんだけど、お父様と伯父様にバレてしまってね」


ちょっと大変だったんだ……と、珍しくお兄様は遠い目をした。
お兄様がそんな表情をするなんてよっぽどだ。

もしかして『夜間部入学についての玖蘭家家族会議』のうち第三十三回から第四十五回まで急に私と優姫が立ち入り禁止になったのって、寮の部屋割りについて揉めてたせい?
ある日突然、第二庭園に巨大クレーターが出来ていたのも秘密裏の大バトルが行われてたからだったり?
今まで繰り広げられてきた数々のバトルも涼しい顔でこなしてきたお兄様が『大変』というんだから、私たち意の知らないところでかなり大事おおごとになってたんだろう。


「結局、隣の部屋にするってことで落ち着いたんだけど……どうしても諦めきれなくてね」


そう言うと、お兄様は私の手を優雅に取ってクローゼットの中へ招き入れた。
よく見るとたくさんの洋服に覆われた壁の奥にさらに扉がある。
その扉を開くと、そこはロココな私の部屋とは打って変わったシックな部屋だった。

「ここは……?」

「僕の部屋だよ。――――表向きはね」


―4/9―

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