とある乙女の華麗なる日常 | ナノ
dream2


「お゛……、お゛に゛い゛ざま゛ど……、い゛っ……い゛っじょじゃな゛がっだ……」

「ちょっ、顔ボロボロ……。なに?お兄様と一緒の部屋じゃなかったから泣いてるの?」

「だっで……、ごれ゛がら゛は……い゛っじょに゛ずめ゛る゛ど……お゛も゛っでだの゛に゛……」

「今までも一緒に住んでたじゃん」

「い゛っじょの゛べや゛がよ゛がっだの゛……!!!」


もう!ゆっきーったら全然分かってない!
あの広い玖蘭の屋敷で一緒に住むのとこの月の寮で同じ部屋に住むのとでは全然違うでしょ!?
だって前世で読んでた夢小説のヒロインは大抵枢様と一緒の部屋だったじゃん!?もしくは寝室の奥にある使われていない部屋を与えられるけどいつの間にか毎日一緒に寝てるとか!!
何で私だけ律義に別の部屋なのよ!!??
あの!寮長様の部屋に住むのは!長年の私の夢だったのよぉぉぉぉおおおお!!!


「珠姫、それは無理だよ」

「な゛ん゛て゛よ゛!!??」

「ちょっと考えれば分かるでしょ。お兄様と同室なんて、お父様とおじたまが許すわけないじゃん。二人がこの寮の設計段階からあれこれ口出してたの、珠姫も知ってるでしょ」

「ぞう゛だげど〜〜〜」


それでもきっとお兄様がこっそり同室にしてくれてるって信じてたのよ!
というか別部屋になるなんて疑ってすらいなかったの!
なのに何故!!!!
お兄様は私と一緒の部屋じゃなくても良かったというの……???
って考えたらまた涙がナイアガラのように出てきたよぉぉぉぉぉ。


「はいはい、もう諦めて今日は寝なさい」


優姫は私を軽く押してベッドに座らせると、チェストの中から適当なネグリジェを引っ張り出して私の上に投げ掛けた。


「ちゃんと歯磨きするんだよー。おやすみ」


パタンと無慈悲に扉が閉められた後、私は泣いた。
それはもう盛大に泣いた。
天蓋付きの豪華なベットに俯せてオンオン泣いた。

やっと一緒のお部屋に住めると思っていたのにぃぃぃぃ。
玖蘭の屋敷で毎朝お兄様のお部屋に通うためにこっそりベッドを抜け出すのも結構大変だったのよ!
お父様やおじたまに見つからないようにするために完全に気配を消すスキルも取得したくらいなんだから!
あれはあれで夜這いめいたトキメキがあったけれども!
学園に来たら親バカ二人がいない分、晴れて同じお部屋でいちゃこら出来ると思ってたのにぃぃぃぃ!!!

思い切り嘆く中、コンコンとノックの音が聞こえたけど無視した。
今はそれどころじゃないのよ!
私の夢が!めくるめく学園生活が!
お兄様とのラブラブスクールライフが!!
私とお兄様を隔てるこの壁一枚が憎たらしいっ!!

するとまたコンコンと音が鳴る。

――――それは入口のドアではなく、反対側のクローゼットの方から聞こえてきていた。


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