dream1
お兄様は後ろを振り返ることもなく先頭を足早に歩いていく。
続く星煉が仮の寮の中を簡単に案内してくれた。
廊下を進みながら、私たちは目配せだけで会話する。
「(珠姫、どうするのあれ!?お兄様、本気で怒ってるよ?)」
「(知ーらない)」
「(もう、珠姫があんなに愛想振りまくからでしょ!?この建物が壊れちゃったらどうするの!?)」
「(……だって、お兄様が悪いんだもん)」
「(ちゃんと仲直りしてよー!初日からこんなのやだよー!)」
二階の廊下の奥まで来ると、お兄様はその先の扉の前で待っていた。
星煉が丁寧に説明してくれる。
「こちらが珠姫様と優姫様の、そしてあちらが枢様のお部屋です。仮住まいゆえ行き届かぬところがあるかもしれませんが、ご不便があればいつでもお申し付けください」
「優姫はもう休みなさい。……珠姫はこっちにおいで。少し話があるから」
禍々しいオーラを隠そうともせずお兄様は私を見据えた。
恐怖におびえたゆっきーの目が「健闘を祈る」と言っている。
いいわ、望むところよお兄様。
今の私はブラックレディ・珠姫!
どこからでもかかってきなさい!
―9/13―
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