episode18
「樹里、おはよう。君の好きな薔薇が今年も咲いたよ」
「まあ悠、こんなにたくさん嬉しいわ。起きてすぐ摘んできてくれたの?」
「もちろん。君のためだけに咲かせた薔薇だからね、それを摘むのもこうして君に捧げるのも僕だけの特権だよ」
「ありがとう、とても綺麗…」
夕方一番、お父様は両手いっぱいの薔薇の花束を抱えてリビングへやってきました。
ローズレッドの薔薇はお母様のお気に入り。
お父様が温室で手ずから育てていらっしゃるのよねー。
とっても大事に、そしてこれでもかってほど大量に。
玖蘭家第一庭園はお父様によるお母様のためのお花で埋め尽くされています。
「君の唇と同じ色だね。あまりに瑞々しいから、僕はいつだって蜜を求める蜂のようにその蠱惑的な花に惹きつけられてしまう…」
「やだ、悠ったら…」
花束をもらって嬉しそうに微笑むお母様に、砂糖を吐くほど甘い台詞を吐きながらキスを落とすお父様。
やだもう子供の前でなにやってるのよー。
っていつものことなんですけどね。
この万年新婚夫婦め!羨ましいぞーっ!
「悠!子供たちの前で何をやってるんだ!けしからん!!」
「妻への愛情を示しているんですよ、お兄様。邪魔しないでください」
「なんだと!?だいたいお前たちはいつも所構わずいちゃついて少しは僕の気持ちも考えたらどうだ…!」
「まあまあ、おじたま、いつものことじゃない。あ、これ引いて」
「ん?これか珠姫?……ってジョーカーじゃないか!!」
「何て手に引っかかってるんですか伯父様……」
「黙れ枢!珠姫に小首を傾げてお願いされたら例えジョーカーだと分かっていても引くしかないだろう!」
「それは同意しますけど、今のは絶対ジョーカーだって分かってませんでしたよね」
「やったー、上りー!ありがとう、おじたま♪」
「珠姫ずるいよー。ねえおじたま、2か10ある?」
「10ならあるぞ、これだ優姫」
「やった!私も上がりー!」
いえーい☆優姫と二人でハイタッチ。
おじたまとのゲームはいつもこんな感じでっす♪
え?ズルじゃないよ?なんていうの、様式美?
でも真剣勝負の時も、おじたまったらすぐ顔に出るからあんまり結果は変わんないんだけどね!
三
「ということで、枢…、一騎打ちだ。ベットはそうだな、珠姫と優姫の写真三枚ずつでどうだ」
「望むところです、伯父様」
お兄様とおじたま、お二方の目がキラリと光りました。
ババ抜きでここまで真剣になれるのもすごいよね!
玖蘭家は今日も平和です☆
―1/7―
≪ | ≫