とある乙女の華麗なる日常 | ナノ
episode17


「――――と、こういう事があったの」

「完全にそのドラマのせいじゃないか!どこのテレビ局だ!抹消してやる!!」

「それよりも樹里、子供たちにそんなものを見せているのかい?」

「あら悠、いいじゃないの。恋の勉強よ」

「珠姫はそんなもの見る必要ないよ。僕が直接教えてあげる」


きゃあああああああああああ!!!!!!
何ですってお兄様!?
恋を教えてくださるの!?
それともその先のラブシーンを手取り足取り!?
大人の階段のぼっちゃう!?
ちょ……!ハナヂデールっっ!!


「お前たち、僕の話を聞け!」


ちょっとおじたま、乱暴に机を叩かないでよ!
せっかくこれから脳内に吹き荒れる赤い血潮をおくびにも出さず可憐に頬を染め上げてお兄様といい雰囲気を作ろうとしたのに!


「そもそも樹里、お前が優姫に要らぬ事を教えるからだ!」

「……私のせいだって言いたいの?」


あ…、お母様が真顔になった。


「私は本当のことを言っただけよ。珠姫も優姫ももうすぐ社交会デビューするんだし、ちゃんとした呼び方を教えても良い頃でしょう」

「お前はわかっていない!マイエンジェルズの「おじたま」呼びにどれほどの癒し効果があるか!」


癒し効果っていうか絶対遵守の力?
上目遣いで見つめながら少し甘えた声で「おじたま、お願い」って言うとどんなことでもしてくれるのよ!
欲しいものは何でも買ってくれるし、ストレス発散にいたずらをしかけても全然怒らないし、ロッテンマイヤー先生の授業をさぼった時なんて私たちの代わりに廊下で正座してくれたんだから!
こんな便利な技を手離してしまうなんてもったいないよゆっきー!


「李土の癒しなんて関係ないわ!この子たちが恥をかくのよ!」

「この呼び方が恥だというのか!?」

「ええ、恥よ!もし私が今でも李土のことを「りどにいたま」なんて呼んでたらどう思うの!?」

「大歓迎だ!!」

グシャッ!!


満面の笑みで手を広げたおじたまは、次の瞬間無言の「純血本気キック」の犠牲になりました。
今すごく嫌な音したよね。
あーあ、頭が床にめり込んでるよ。

っていうかお母様!?もしかして昔は「りどにいたま」なんて呼んでたんですか!?
ということはお父様のことは「はるかにいたま」ですか!?
まさか私たちの「おじたま」呼びがお母様ゆずりだったなんて!


「李土のせいで嫌なことを思い出しちゃったじゃない!せっかく忘れかけてたのに!」


ねえお母様、たいそう怒ってらっしゃるのは理解してるんですがその…少しは手加減しました?
さっきからおじたまがピクリとも動かないんですけど。
さらに流れ出る血や飛び散った肉片でお部屋がとってもグロテスクなことになってます。
これ以上汚れても大変なので「たまには僕もまた呼ばれたいな」っていうお父様の呟きが聞こえたのは珠姫の胸の中だけに留めておきますね。


―3/9―

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