とある乙女の華麗なる日常 | ナノ
episode16


「――――おい」


え、なに?
私いま風邪引いてるんですけどー。


「――――おい、起きろ」


えー、だからだるいんだってー。
……あれ?身体のだるさが消えてる?

そっと瞼を開けて見れば、高く澄んだ空の下に映える銀の髪が視界を染めました――――


「……っ!」


あ、真っ赤になっちゃた。かぁーわいい。
……って!目の前にいるこの少年、どう見ても零りんなんですけど!?
え?え?どういうこと!?

周りを伺ってみると、どうやらうちとは別の山の中みたい。
わずかに開けた大地と小さな湖、そこにある木の幹に私は身体を預けて座っていました。
陽の光が水面に反射してキラキラしているのに、不思議と眩しくはありません。


「ここはハンターの修行用の土地だ。お前が入り込めるところじゃない。――――吸血鬼」


少年はまだあどけなさの残る高い声で言いました。

……どうしよう、変声期前の少年零りんとか萌えしかない!
でもとりあえず確認して見ましょうかね。
別人だったら困るしね。


「……零?」

「なんで俺の名前を…!?」


やっぱり零りんだったー!
そうだよね、銀髪にハンターときたら零りんしかいないよね!
んー?何で名前を知ってるかって?
そ・れ・は・ね、


「ひみつ」


ふふっと笑って耳元でささやけば、少年はさらに頬を染めました。

やーんもう可愛い!零りんきゃわいいー!
こんな可愛い少年零りんを拝めるなんて!
きっとこれは神様が見せてくれた素敵ドリームね!
風邪引くのもたまには悪くないなー。


「俺の質問に答えろ!どうしてここにいる!?」

「わからないわ」


だって夢だし。
でもリアルだなー。
このツンツンっぷりがたまらんよね!


「そんなことより一緒に遊ぼう?ね、零」

「だから何で俺の名前を…っ」

「"秘密"って言ったでしょう?」

「答えになってない」

「女は秘密を着飾って美しくなるものなのよ」


「A secret makes a woman woman」
コードネームがお酒のブラックな組織に属する女スパイの台詞ですけどね。
私も秘密の似合う女になりたいわー。

さぁてと、何して遊ぼうか零りーん☆
と期待に萌えを膨らませた矢先。


――――珠姫……珠姫……


湖の方から私を呼ぶ声が聞こえました


――――珠姫……珠姫……


あら?これはお兄様の声ね!
もうお目覚めの時間かなー。
せっかくの良い夢だったのにぃ…、残念。


「もう行かなきゃいけないみたい」

「は……?」

「じゃあね、零。また会いましょ」

「ちょっと待て――!」


―6/9―

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