episode16
「さあ優姫、おバカなおじたまは気にせずに珠姫にりんごを……って、あら?」
口論に夢中になってた大人たちが我に帰った時、すでにりんごのお皿は空になっていました
「残念ですがお母様…、たった今優姫が食べさせ終えてしまいました」
りんご美味しかったよ。
ありがとゆっきー!
ごちそうさまでした!
「そんな……、李土のせいよ!娘たちの可愛い姿をカメラに収めることも出来なかったじゃない!」
「ああ…、優姫が珠姫を看病するなんてこの先見られるかどうか……」
本気で落胆するお父様とお母様にお兄様が言いました。
「でも安心して下さい。動画と写真はばっちり撮りましたから」
「枢…!」
「さすが僕の息子だね」
「よし枢、そのデータを今すぐ僕に渡せ」
「お父様、データを渡しますからどうぞお母様と一緒に見て来て下さい。珠姫は眠ってしまったようなので……」
あ、お兄様違うよ?寝てないよ?
こんな騒がしい部屋では寝れませんよー。
でもりんごを食べるのに全体力使ったからね、ちょっと疲れちゃっただけ。
本当はあんまり食欲なかったけど優姫が作ってくれた物を残すわけにはいかないじゃない!
「じゃあ僕が看ていよう!」
「五月蠅いですよお兄様、珠姫が起きてしまいます」
「李土は今からお仕置きよ。"純血本気キック"と"純血本気パンチ"、好きな方を選ばせてあげるわ」
「じゅ、樹里…、目が本気だぞ……?」
「あらもちろん本気よ。屋敷の中を汚したくないから表に出てね。というわけだから枢、珠姫のことをもうしばらくお願いしてもいいかしら?」
「もちろんです、お母様」
「私も残るー!」
「優姫はダメよ、もうすぐ桐野塚先生がいらっしゃるでしょう?」
「えー…」
ゆっきーめ、私を口実に今日のお勉強をサボるつもりだったな…。
残念でした、数学のお勉強がんばっておいで。
優姫はしぶしぶ、おじたまはぶるぶる、お父様とお母様はいつも通りラブラブで部屋を出て行き、お兄様だけが残りました。
やっと二人っきりね、お兄様!
……と言いたいところなんだけど、さすがにもうそんな気力はありません。
ああ、頭がガンガンして瞼を開けるのも億劫……。
よし、大人しく寝よう。
「おやすみ、珠姫」
意識が暗闇に引きずられていく中、お兄様の声がぼんやりと聞こえました。
―5/9―
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