とある乙女の華麗なる日常 | ナノ
episode16


「珠姫、具合はどう?」

「……おにいさま」


名前を呼ばれて目を開ければ、そこにはお兄様の麗しいお顔がありました。

なんと!私としかことが!
意識が朦朧としてるせいでお兄様がお部屋に入って来たことに気付かなかったなんて!!
いつもなら超精密お兄様探知センサーが真っ先に反応するのに!
あー、こりゃかなり熱高いな……。
ってお兄様?お顔が近くないですか?
え?え?え?近い近い近い!!!美しいかんばせが至近距離!!
これはあれですか?チューしちゃう感じですか?
「僕に移して治せばいいよ」的な!?
きゃああああああああああごほっ、ごほごほっ!!
ああ!!熱に体力奪われてるから脳内ですら叫べない!!

急ピッチで心の準備を整えて準備万端バッチコイ!とそっと瞼を閉じたら……


――コツン


「さっきより熱、上がっているね」


少しだけひんやりしたものが額に当たると同時にお兄様の心配そうな声が顔のすぐ前で聞こえました。

こ、こ、これは……っ
伝説の「おでここっつん☆熱はかり」!!??
ふわああああああああああああああ!!!!!!(え?脳内絶叫が出来ない?そんなこと誰が言った?)
あれでしょあれでしょ!?原作三巻収録の特別編であったあれでしょ!?
あの時私がどれほど悶絶したか!!
まさかそれを自分がされるなんて!!
キスの準備は出来てたけどまさか「おでここっつん」が来るとは思ってなかった!
お兄様!不意打ちにもほどがありますよ!!
それに「こっつん」したまま話すなんて!吐息が…!視線が…!近い!!
やばいやばいこれ熱上がるって!!
でもここはセオリー通り返しておくべきですか!?


「ダメ、おにいさま…、風邪、うつっちゃう」

「移していいよ」


お兄様はやさしい声でそう言うや否や、私の唇に軽くちゅっとキスを落としました。

ぎゃああああああああっっっっっっす!!!!!
何これ何これ何これ!!
不意打ちにも程があるでしょ!?
「おでここっつん」からのキスとか!!
お兄様は私を殺す気なの!?
確かに今までに何百回も萌え殺されてきたけど今はこんな状態だから本当に熱上がるからね!?
むしろ沸騰しちゃうからね!?
いえお兄様に殺されるなら本望ですけど!!


「おにいさま……、ずるい」


照れた顔を隠す様に布団を鼻まで持ち上げて熱で潤んだ瞳を強調。
ベッドに横になっているのでお兄様を見つめる視線は自然と上目遣いになります。
やられっぱなしも癪なので(いつもやられっぱなしだけど!)ここで小さな反撃です!
華麗乙女必殺☆上目遣い&うるうるEYEスペシャル!


「…ずるいのは珠姫の方だよ」


おおっとぉ!?
お兄様の頬が若干染まった!
赤面するお兄様!レア!!
これはうるうるEYEスペシャルが効いてる!?

お兄様は、はぁ…と妖艶な溜息を零すと小さな声でぼそっと何かを呟きました。


「……風邪を引いててこの威力……。こんな姿を僕以外の男に見られたら……」


ん?何?
今何て言いました?
聞こえなかったよ?


「なに?お兄様…?」

「いや…、何でもないよ」


お兄様は何事もなかったようにやさしく微笑むと、私の手を取って口付けました。


「僕に移していいから早く治して。じゃないと僕の方が心配で倒れそうだよ」


ヒイッッッッッッッッッ!!!!!
ちょ…!!!!!まさかのカウンター!!!???
っていうかそこちょうど薬指なんですけど!それも左手だし!!
分かっててやってるのお兄様!?
これはもう「珠姫の面倒は僕がずっとみるよ」っていうエンゲージ予約と捉えてOK?

ちょっとやっばい熱上がる!!


―2/9―

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