とある乙女の華麗なる日常 | ナノ
episode15


(これより先は【華麗乙女ナチュラル小悪魔loveモード】でお送りします)

「お兄様…」


目の前の麗しいお顔を両手で包み込んだ。
紅い瞳の奥には血の色が滲んでいる。
私も今、同じ目をしているの?


「…上手く噛めなかったらごめんなさい」

「大丈夫、その時はちゃんと僕が教えてあげるよ」


頬に添えた両手をシャツに伸ばして、ボタンを一つずつ外していく。
徐々に露わになる項、鎖骨、胸板。

――――オイシソウ

首筋にそっと舌を這わせればお兄様の身体が微かに震えた。
ペロリペロリと舐めながら噛みやすそうな血脈を探す。
……あ、あった。


「そう…、そこだよ、珠姫」


お兄様の言葉と同時に、そこに牙を立てる。
でも噛み方が浅かったみたいで血が出て来ない。


「もっと強く…、噛んで」

「……ん」


今度はもっと思い切り。
――――ブツリ
深く牙を埋め込むと今度は勢いよく赤い血が噴き出してきた。


「……っ」

「ん……んく……んぁっ……」


濃い血の香りで頭がくらくらする。
じゅるじゅると音を立てて溢れる血を啜れば、口の中に広がるのは芳醇な味。


「そう…っ、上手だよ……」


そして、どこまでも深い、お兄様の想い。

知らなかった、吸血行為ってこんなにもダイレクトに感情を伝えるんだ。
言葉なんかじゃ到底かなわない、想いが身体に直接流れ込んでくる。
その味はどこまでも甘美で、もっともっと欲しくなる。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
私、こんなにも愛されてるなんて……。

――――その時、
お兄様の想いの波の狭間に、ちらりと白い服を着た女性の姿が見えた。


「――――珠姫、泣いているの?」

「え……?」


顔を上げればお兄様の頬にぽたりと落ちる、赤い雫と透明な液体。


「何か、見たの……?」

「……何も」

「…………そう」


嘘、ついた。
だってあれは、あの人はきっと……

―10/12―

|

[back]

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -