とある乙女の華麗なる日常 | ナノ
episode15


「―――枢!」

「うわあああぁぁぁぁぁ………」


おじたまがお兄様の名前を叫んだ瞬間、今度はお父様が消えたぁああ!?
違う!落とし穴です!!
芝生で覆われていた地面に突如とした開いた穴にお父様が落ちた模様です!
それもこの落とし穴、ただ地面に穴を掘っただけのものではないようです!
なんだかとってもメカニカル!!そして深い!!推定五メートルほどでしょうか!
その近くの木の影にはいつのまにか戦闘からいなくなっていたお兄様の姿が!
手には何だか怪しげなボタンが握られています!
実に良い真っ黒笑顔です!
ハッ!これは絶好のシャッターチャンス!
お兄様その目線こっちにちょうだいー!!


「まさか……あなたたちが手を組んで!?」

「誰が衰えただと?ふっ、馬鹿め。お前をその場所へおびき寄せるために手加減していたんだ」

「二人掛かりとは……卑怯ですよ……!」

「お父様に勝たれて珠姫が結婚出来なくなればどうしようもありませんから」

「ふっ…、そういうことだ、悠」


なんと!!
お兄様とおじたまが共同戦線を張っていたようです!


「…たかが落とし穴に落としただけで僕を倒せたつもりですか?これくらいの高さを登るくらいなんとも……、くっ!?」

「すみません、お父様。この落とし穴は伯父様用に作った物なので周囲の壁に対吸血鬼用の術式を張り巡らせているんです。触れるだけで相当の痛みが走ります」

「それは聞き捨てならんぞ、枢!本気じゃないか!」

「伯父様用なんだから本気ですよ?当然でしょう?」

「待て枢!僕は父親としてこの勝負を放棄するわけには…っ」

「お父様、この勝負が終わったら救出しますから、そこでしばらくゆっくりなさっててください」


お兄様はにっこりと笑って再度ボタンを押しました!
するとガシャンと穴を塞ぐ鉄格子が!
あれって協会の鉄格子と同じやつじゃない?あれもビリビリくるやつじゃない?
お兄様恐いー!えげつない!!
でもその魔王様のごとき暗黒の微笑みが珠姫は大好きでっす!!


「珠姫ーーーーー………」


深い穴の中から、延々とお父様の麗しい声が響いていました。

――悠、陥落――


―7/12―

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