とある乙女の華麗なる日常 | ナノ
episode13


―side更―

定期的な純血種同志の懇親会なんて、ずっと退屈だと思ってた。
だからわざと少し遅れて入ったの。
でもわたくし、そこで理想を見つけたわ。

ホールに入った瞬間に目に入った後姿。
つややかな黒橡の髪、薄紫のワンピースドレス。
近付けばその子は振り向いた。
そしてわたくしを真っ直ぐに見たの。

ああ、わたくし…、その深紅の瞳に射抜かれてしまったわ!


「初めまして。わたくしは白蕗更よ」

「玖蘭珠姫です。初めまして」

「じゃあ貴女が枢さんの妹君…?まあ…、まあ…」


まあ…!まあ…!
なんて愛らしいのかしら!!
珠姫というのね、お名前まで可愛いこと!

わたくし、一目で確信したわ。
彼女こそわたくしの理想とする永遠の乙女だって…!

嗚呼…、その陶磁器のように滑らかな肌。
触れればきっと、指に吸いつくように瑞々しいのでしょうね。
薔薇の花びらを浮かべた様にほんのり色付いた頬。
もっと赤くなった貴女も見てみたいわ。
長い睫毛に縁取られたつぶらな瞳。
ねえ、閉じた瞼の裏側で貴女はどんな夢を見るの?
小さな唇から零れるのは天使の竪琴のような声。
どんな楽器も適わない、それは天上の音楽。
幼いながらもすらりとした肢体。
花柄のワンピースがとてもよく似合っているわ!

まさかこんな…っ、絵にかいたような愛らしい乙女が存在するなんて!
見た目は完璧!問題は中身ね…。
けれど性格はこれからいかようにも変えられるわ。
わたくしが求めるのは清らかな眼差しに秘められた悪意。
鈴蘭や沈丁花や石楠花や鳥兜のように、猛毒を美しい花で隠したような少女!
嗚呼っ!ずっと想い描いていたわたくしの夢!
そんな少女が愛らしい唇でお姉様と呼んでくれたら…!

〜更のめくるめく乙女劇場〜
「お姉様…っ」
「まあ珠姫、いきなり抱きついてきたら危ないわ」
「だって、お姉様っていい香りなんだもの」
「ふふ、そう?」
「なにをなさっているの?」
「ハンカチに刺繍をしているの」
「わぁ素敵!どなたかにあげるの?……まさか、恋人?」
「くすくす、この子ってば何を言うのかしら。そんな方いないわ」
「嘘よ!私、知ってるんだからね!お姉様と結婚したいって方がたくさんいらっしゃるの!」
「いやよ、殿方なんて。私はどこにも行かないわ」
「お姉様…」
「はい、出来たわ。貴女のよ」
「え…、私に?」
「もちろんよ、私の可愛い妹。貴女より大切な者なんていないもの」
〜END〜
(どこかで見た?それはきっと気のせいです☆)

慕い合う美しい姉と妹。
乙女の秘密の百合の園。
殿方のいない清らかな世界。
詩を読み、ピアノを奏で、手を繋いで花の中を駆け回る。
嗚呼!これぞわたくしの理想の愛の形……!


―6/11―

|

[back]

×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -