とある乙女の華麗なる日常 | ナノ
episode13


車は山道を滑るように下って行きます。
シートはふかふか、そして何より隣にはお兄様がいるという最も天国に近いと言ってもいい車内だけど、今の私はピリピリしてそれどころじゃありません。

だって目的地は白蕗邸!
いわば敵の陣中に足を踏み入れるのよ!
そしてその総大将と初対面するんだから!!

ぐぬぬ…、更…!
忘れもしないわ原作五巻第二十五夜ぁ!
あの女っ、あろうことかお兄様に…っ!
お兄様に手に口づけされてたのよぅううっ!!
それが夜会での挨拶だということは重々承知してるけどね!?だけど嫌なものは嫌!!
それからしばらく出番がなくって、「なーんだ、結局モブキャラだったんだー」と思ってたらまさかの再登場!
キラキラ王子こと拓麻さんを…っ!拓麻さんを監禁するなんて羨ま……ゴホン、なんて酷いの!!
そして極め付けには『女王様になるのだもの』ですってぇええ!!??

あやつの狙いは権力よ!世界征服よ!
それに一番近い道は玖蘭の次期当主であり始祖でもあるお兄様の妻になること!
原作のように元老院を壊滅させて、玖蘭家が王制を再び開始すれば当主の妻はつまり女王!
キッー!!考えただけで頭に血が上ってくるわ!
そんなこと絶対にさせないはもちろんだけど、お兄様を狙っているというだけで許せない!
なんという不届き千万!!きえぇぇい!!手打ちにしてくれる!!
お兄様は私のものなんだからぁあああああ!!!


「珠姫、ほら見て、月が綺麗だよ」

「………(白蕗更許すまじ白蕗更許すまじ白蕗更許すまじ)」

「珠姫?」

「……え?」

「元気がないね、具合でも悪いの?」

「ううん!平気よお兄様!」


はっ…!私とした事が!
お兄様に話しかけられてとっさに対応できないなんて!
ああっ…!なんたること!!
でも大丈夫よお兄様!具合が悪いどころか戦力が漲っておりますから!!
それに私の頭の中はいつだってお兄様でいっぱいよ☆


「珠姫が緊張するなんて珍しいねー。昨日もあんまり眠ってなかったでしょ?」

「そ、そんなことはないよ優姫」


違うのよゆっきー!
昨日は確かにほとんど眠ってないけど、それは今夜の作戦を考えてただけだから!
こういうのは最初が肝心だからね!
第一印象で差を見せつけてやらなきゃいけないの!


―2/11―

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