王妃の日記−番外編− | ナノ


 ◇降り籠められて、夕立−4/4−
「…そういえば、昔もこんなことがあったね」

「え…?」

「いつだったかな…、散歩中にこうして夕立にあって、二人でずぶ濡れのままこんな小屋で雨宿りして…。後から聞けば、僕たちが見つからないからって城中が大騒ぎしたみたいで……」

懐かしい記憶に思わず笑みが漏れた。
遠い遠い、昔の思い出。
まだ僕たちが眠りに着く前の、幸せだった時代のこと。

「…私、知らないわ」

でも、そうだ。
今の君は覚えていない。

「ねえ、枢、それっていつのこと?」

君の言葉は僕の心を打ち砕く。
幸せな思い出は一人ぼっち。

「…昔の、ことだよ」

「……枢?」

「なんでもないんだ」

夕立に降り籠められて。
切ない心は押しこめて。

ただ、君を掻き抱いて、雨が過ぎゆくのを待った。

−END−
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