王妃の日記−番外編− | ナノ


 ◇降り籠められて、夕立−3/4−
僕もまた走り出す。
雨はいよいよ本降りになって視界を遮った。
白亜の気配を辿れば、行き着いたのは馬場の近くの物置小屋。
薄い板の扉を開ければ、そこには小さくうずくまる君が恐る恐る僕を見上げていた。

―――ああ、いつかもこんなことがあった。

「……かなめ…」

「探したよ、白亜」

白亜に近寄ると、震える白い手が僕の首に回される。
しがみつくように、縋りつくように抱きつかれて。
不謹慎だけど、そんな君が可愛くて笑みがこぼれた。

「……キャアッ!!」

途端、窓の外が急に明るくなった。
黒雲に目映い閃光が走り、地鳴りのような轟音が響き渡る。

「大丈夫だよ、白亜」

「いや…、いやよ…。私に向かって走ってきそう」

罪人のように雷を恐れる白亜をぎゅっと抱き締めた。

「大丈夫だよ…」

白亜の目を覆い、片耳を僕の胸に当て、もう片方の耳を手で塞ぐ。
君の瞳にあの光が映らないように
君の耳にあの音が届かないように、
きつくこの腕に閉じ込めて。
君が感じるのは僕の鼓動と、僕の匂い、
そして濡れそぼった布越しに伝わる僕の体温だけ。

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